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信用金庫が中小企業のIT経営支援を行う理由とは? 西武信用金庫 落合理事長に聞く

2015年 夏号 2015.09.01


企業の経営において欠かせない存在である金融機関。
不良債権に悩むところが多い中で、融資先企業の業績を上げ、自らの収益も伸ばしているのが西武信用金庫である。

最近では、IT活用の支援にも具体的に踏み込んでいる。
この取り組みの背景にある思いとは?
COMPASS本誌(冊子版)夏号の落合寛司理事長インタビューを、さらに詳しく紹介する。(文中敬称略)

融資先の業績を上げ、自らの業績も上げる信用金庫
西武信用金庫 落合寛司理事長インタビュー

──業績は右肩上がり、格付けも上昇しています。その理由はどこにありますか。

落合 おかげさまで、預金残高、貸出金残高、収益がプラスで推移する一方、不良債権は残高・比率ともに減少。延滞率も0.07%という低い数値となっています。
この成果は、コンサルティング機能を発揮した課題解決型の提案活動によるものと言えます。お客さまが経営改善に成功し元気になっておられるという何よりの証しです。

──「課題解決型の提案活動」とは具体的にどういうものでしょうか。

落合 活動は「お客さま支援センター」と名づけています。
具体的には、

  1. 地域で活動する事業者様の課題解決に取り組む「事業支援」
  2. 豊かで魅力あふれる街の創出に向けた課題解決に取り組む「街づくり支援」
  3. 個人のお客さまの課題解決に取り組む「資産形成・管理支援」

の3つで構成されています。

──「事業支援」では、多種多様な支援メニューを揃えていますね。

落合 ビジネスマッチングや異業種交流の場を提供する「ビジネスフェア from TAMA」、地域の食料品製造・販売業を営む企業をメインに東京の逸品・自慢の味を紹介する「東京発!物産・逸品見本市」といった大規模イベント、各種のセミナーや勉強会、親睦会などの開催に加えて、事業承継や海外展開に関する相談窓口、そして経営・法律・知財・財務・マーケティングなどさまざまな分野で約3万人の専門家と連携した派遣事業も展開しています。

まず金融機関側が「覚悟」を決め、企業支援に取り組む

──金融機関の経営支援が提起されて久しいですが、実行し続けるのは容易ではないと思います。なぜ、できるのですか。

落合寛司理事長

落合寛司理事長

落合 金融業界全体が厳しい時代を迎え、私どもも業績が落ち込んだとき、「金融機関の本業は何だろう」と問い直したのです。お客さまに成長していただくことが融資の目的なら、経営でお困りのことを支援するのは当然です。
製造拠点の海外移転など、大きな変革に直面する中小企業のお客さまをサポートしないで「取引が減っている、業績が落ちている」と言っていては、私ども自身がただ潰れるのを待っているだけ。
そういう覚悟で、スタッフの業務もいわゆる集金からコンサルティングに軸足を移し、業績の評価方法も大幅に変えたのです、

──3万人の専門家と連携するなかで、最近はITの活用にも注力されていらっしゃいますね。

落合 2013年12月にはITコーディネータ協会と中小企業支援に関する包括的協定を締結しました。それまでも個々に連携はしていましたが、企業経営に戦略的なIT活用がますます必要不可欠となる中で、「メインメニューにすべき」と判断しました。
「IT活用サポート事業」というメニューを設け、IT分野の課題解決が必要なときは、ITコーディネータの方を派遣しています。
※「IT活用サポート事業」の支援事例(エージーリミテッド社の事例)はこちら

──これまでの実績はいかがですか。

落合 約1年半での派遣先は200社ほどになりました。ただ、私どもが融資しているお客さまの数から考えても、もっともっと実績を積み上げなければなりません。そのためには、私どものスタッフ全員がお客さまに接する中できちんとニーズを把握するスキルを高めていく必要があると考えています。

ITは道具 経営者自身も使いこなす努力を

──中小企業の経営におけるIT活用の重要性をどのように捉えていますか。

落合 日本の中小企業にとって大きな課題は、販路拡大と経営の合理化・効率化の2つが挙げられます。

製造業を中心に大手企業の下請けを続けてきた企業は、自力での売上確保をしなければならなくなったときに躓いてしまいます。販路開拓に取り組む際、今の時代はITを使わざるを得ません。

また、経営の合理化・効率化を図るためには、短期的な収支バランスしかわからない損益計算書ではなく、企業の体力・体質を長期的な視点で分析できる貸借対照表(バランスシート)を見る必要があります。こうした経営データの蓄積も求められています。

このように、いまやITなくして経営はできない時代になっています。そして、経営とITが密接に関連している以上、経営者が「私には関係ない」と興味すら持たないのでは、経営改善を実現することはできません。

──とはいえ、「ITは難しい」という先入観をなかなか拭えない経営者も多いようです。

落合 ITは自分の記憶力・能力の補佐だと思ってほしいですね。例えば、飲食店で常連のお客さまの「いつもの」というだけの注文がわかる、お客さまに「今日は誕生日ですね」と一言添えられる、お客さま先を訪問した際に「あの商品がなくなる頃ですね」と言える。といったような、お客さまのことをきちんと知って、お金のかからない満足感をお客さまに提供するための道具がITです。

昔は記憶や経験に頼ったり、お客さま台帳を活用しましたが、今はITを活用するのがスタンダードになりつつあります。この変化を意識して経営改善につなげていただければと思います。

プロフィール

  • 西武信用金庫
  • 創立:1969年6月30日
  • 本店所在地:東京都中野区中野2-29-10
  • 営業地区:東京都、埼玉県、神奈川県の一部
  • 店舗数:本支店67、ATMコーナー36 計103
  • 職員数:1134名(2015年3月末現在)
  • URL http://www.seibushinkin.jp/