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IT業界で培ったスキルを活かし、今こそ目指したい資格とは?

2026年6月取材 2026.07.17


 

情報システムの構築やプロジェクトマネジメントなど、情報通信業界でキャリアを積んだ人材は、その先にどんなステップアップのルートが開かれているのだろうか。

 

企業・組織はDXを推進できる人材を求めている

国内には450万近くの企業・組織がある。多くは進化を続けるAIをはじめ、ITを活用した業績向上に関心を抱いているものの、IT活用や情報システムについて、経営者と話せる人材が少ないこともあり、戦略的IT活用やDXの推進は十分進んでいるとはいいがたい。

言い換えると、ここにはIT人材がステップアップして活躍できる大きな領域があるのだ。

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が発行する『DX動向2025』においては、DXを推進する人材が「やや不足している」「大幅に不足している」と回答した企業の割合が85.1%に及んでいる。なかでも、最も不足しているのが「目的設定から導入、導入後の効果検証まで、関係者をコーディネートしながら一気通貫して推進する人材」と指摘されている。

情報通信業界で身に付けた知識やノウハウを活かしつつ、各社の経営戦略に沿った方針に基づき、情報システム

ビヨンドクレスト 代表 小笠原裕氏

の計画立案・実行から、導入後の効果検証まで、一連のプロジェクトをサポートできる能力を身に付ければ、活躍の場が大きく広がるのである。
 
「私は、組み込みソフトウェアの開発、製品企画を経験し、プロジェクトを回す立場でした。経営に近い部分に関わる機会も得て、この経験を活かせる資格として目に留まったのがITコーディネータ(ITC)です」
こう語るのは、ITコーディネータ資格を取得し、自らキャリアアップに挑戦した、ビヨンドクレストの小笠原裕代表である。

「高度情報処理技術者試験のように高度な知識・技能を学び実行するための資格も、経営支援を学ぶ資格もあります。そのなかで、経営者と同じテーブルに座って方向を決め、助言し、さらに実行まで伴走するフレームワークを最も明確に持っていたのがITCでした。例えば、プロジェクトマネジメントの国際資格PMPをお持ちの方であれば、プロジェクト推進力を経営変革の文脈に接続する資格として、ITCはとても相性が良いと感じています」

 

●ITCの根幹、PGLの「すごさ」-伴走のフレームワーク

ITCが経営とITを橋渡しし、顧客と共に歩むことができるのはなぜなのか。

小笠原氏がITコーディネータ資格を高く評価する第一の理由は「PGL(プロセスガイドライン)」である。現在は「PGL4.0」となり、ITCの資格認定を行っている特定非営利活動法人ITコーディネータ協会がその内容を公開している。

特定非営利活動法人ITコーディネータ協会
「ITコーディネータプロセスガイドラインVer4.0」

 

「PGL4.0」では、「デジタル経営」の実現に向けた実行基準・判断基準の指針として、デジタル経営成長サイクルと価値実現サイクルのプロセスを示している点が大きな特徴である。場面も、新規事業開発等で新たな顧客層を創出する場合、既存事業の業務を抜本的に改革する場合、既存事業の業務効率を改善する場合と、現実に沿った設定である。

「PGL4.0は、経営者との対話、変革認識、戦略策定、実行計画、IT導入、価値検証、共通基盤、組織学習までを一つの流れで扱っています。経営コンサルティング全体に使えるフレームワークとして、コンパクトでありつつ、必要なことが盛り込まれていると感じました。中小企業の変革に伴走するための実務のフレームワーク(型)として活用できます」
小笠原氏は、自身が実感した「PGL4.0」の価値をこのように説明する。

ITCの役割は、『DX動向2025』で示された、日本に不足している「DXを一気通貫して推進していく人材像」そのものでもある。
情報分野における実行力や設計力を示す資格である高度情報処理技術者を取得した人は、「PGL4.0」を学ぶことで、その力を、経営者との対話や中小企業の変革支援にまで広げることが可能になるのだ。

 

●試験の内容は「PGL4.0」。でも過去問がほとんどない…ならば作ろう!

ITC資格の取得には、原則年2回実施される「ITコーディネータ試験」への合格と、全国各地で開催される「ケース研修」の受講・修了が条件となる。片方をクリアしてから4年度以内にもう片方をクリアして、認定申請まで行う。また、情報処理技術者試験や中小企業診断士など、ITコーディネータ協会が指定する資格を保有していると、問題数が6割程度で受験料が半額の「ITコーディネータ試験専門スキルコース」を受験できる。情報通信業界で仕事をしてきた人には、挑戦しやすい資格といえる。
(ITコーディネータ試験サイト https://itc-shikaku.itc.or.jp/exam/

試験は、CBT方式で行われ、「PGL4.0」(以下PGL)の内容が問われる点が大きな特徴である。つまりPGLをしっかり読み込み、使える状態まで理解しているかが問われる。

しかしながら、ITコーディネータ協会が過去問題を一部公開している以外に、受験用問題集など教材がほとんどなく、「経験がない状態でPGLを順に読んでも頭に入りにくい」「暗記したとしても実際に問題が解けるのか心配」との声もある。この点は受験に際しての「見えないハードル」かもしれない。

「一層の活躍が期待されるITCを増やしたい」 との思いからWeb問題集を作成・公開

小笠原氏が受験した当時は改訂前のPGLだったが、試験勉強では苦労したと振り返る。
「PGLはすばらしいものの、試験勉強の際には法律書を読んでいるような感覚になるなど、なかなか頭に入りませんでした。PGL4.0になって以前より整理されましたが、それでも初学者にはハードルが高く感じられます。特に試験より前にケース研修を受ける方は、実習に追われてPGLの内容が腹落ちしにくい面もあります。もし、これまで以上に学びやすく、試験対策がしやすくなれば、さらに多くの人がITCに挑戦しキャリアアップできるのではないかと考えました」

そこで、小笠原氏は自ら問題集を執筆し、Webサイトにて75問を無料公開した。

 

加えて、Webサイトや「note」をはじめとした情報発信、Kindle書籍2冊の刊行など、資格取得後の実務面で役立つコンテンツも提供している。
これらのコンテンツは、資格取得後のITCがPGL4.0を学び直し、知識をアップデートするための入口にもなる。

「自分の理解が正しいかどうか客観的に確認したい」「PGLを読むだけでは不安なので実際に問題を解いて確かめたい」など、不安を抱えた受験者の目に留まり活用者が増えていった。

2025年度第2期試験に対応する期間で見ると、Web問題集第1弾の期間内回答数は630件となり、同期間の受験者数623名に対して101.12%に相当した。これは実受験者の利用率やユニークユーザー数を示すものではないが、受験者層に広く届いた可能性を示す数字といえる。

このWeb問題集は、問題と解答に加え、丁寧なヒントなど理解を深めるための解説が充実しているのも大きな特徴である。「正解を選べればよい」という試験対策にとどまらず、ITCになった後も、PGLをより深く理解し、自分のものとして身につけ活用できることを最終目標としているからだ。ヒントを読みながら正解を見つけるプロセスでPGLの内容が身についていく。

Web問題集の制作に取り組むことで、小笠原氏自身もPGLを学び直すことができたという。

 

<ITコーディネータ試験対策Web問題集の特徴1>設問に関する詳しいヒントを読むことで、PGL4.0を学べる

<ITコーディネータ試験対策Web問題集の特徴2>不正解の選択肢に関する解説で、理解を深める

 

●実際にWeb問題集を活用したITC受験者の反応は?

小笠原氏は、なぜここまで丁寧にITコーディネータ試験の受験者をサポートするのだろうか。
「経営と実行をつなぐPGLはすばらしく、伴走支援の型としても有効です。ITCだけのものにするのはもったいないと感じるほど、経営コンサルティング全体のフレームワークとしてよくできています。Web問題集を公開することで様々な経験を積んだ方々がITC資格に挑戦しやすくなれば、今、日本で求められている、中小企業の現場で役立つ人材を増やすことができます。さらに、これからのAI時代は、人とAIの協働を設計する重要な役割も期待されています」

根底にあるのは、今、社会で強く求められ一層の活躍が期待されるITCを増やしたいとの思いなのだ。

では実際に問題集を活用した人はどう感じたのか。

「note」でITコーディネータ試験の合格体験を投稿している、「sushi3san」氏が「試験対策でお世話になったので」と特別にインタビューに応じてくれた。

「sushi3san」氏は次のように振り返る。
「ITコーディネータ試験で出題されるPGLは、私の経験からも、腑に落ちる内容でした。ただ過去問題がなく困っていたときに小笠原さんの記事にたどり着き、最初に目にしたまとめのパワーポイント資料が大変わかりやすく『これだ!』と。概念が、自分の体感とつながる現場感のある言葉にされており、現場での行動の型が示されていたので、短時間で内容を習得できました」

noteで発信 Tコーディネータ試験合格、sushi3san氏に聞く

「note」記事は、→こちら

SEの仕事を約10年、今は転職先の組織内で役員級に説明する機会が多いポジションです。ITスキル標準(ITSS)4以上の資格習得が推奨されていたこともあり、関連資格を調べているときに、ITだけではなく活用の視点や経営課題への提案などを含む資格であるITコーディネータに興味を持ちました。資格取得により実務面での強さや柔軟性もアピールできるのではないかとの考えもありました。試験勉強にあたり、「PGL」は用語に少々癖があると感じたものの、腑に落ちる内容で、読み物として読み進めることができました。

ただ、過去問がなく困っていたところ、ネットで探してたどり着いたのが小笠原さんの記事です。
PGLのポイントがパワーポイント1枚にまとまっている記事を見て、「これだ!」と。
もしPGLを読む前に見ていたら、もっと早く理解が深まったかもしれないと思うくらいでした。

各問題に関する解説では、経営者との接し方(単純に最初の要望に答えて終わりではなく、ステップを整理して順に進める、進める時と止める時の働きかけ方など)は体感ではわかっていましたが、それが言葉になっていたことに感動しました。また、現場での行動の型が整理されていたためわかりやすく、短時間で内容を習得できました。
IT関連の資格と言えば、IPAの情報処理技術者関連の資格が有名ですが、デジタル側が中心です。経営目線や現場での運用などの分野をカバーしているのがITCの良さですね。別資格でITILv4やPMPを学ぶ機会がありましたが、ITCのケース例や記載のほうが実感を持てる内容が多いとも感じました。

試験前は学習した内容を「NotebookLM」に読み込ませて問題を作って解いたりもして、無事、ITコーディネータ試験に合格することができました。次はケース研修を受講します。ケース研修でも、さまざまな領域で活躍されている方々から知見を得られることを期待しています。(談)

単にPGLの概念を「問題と答え」に置き換えるのではなく、現場で使う場面を想定して解説しているので、学習者の理解が深まるようだ。

PGLをより深く理解できる問題集の登場で、受験の課題を乗り越え、挑戦機会を広げたと言えるITC資格。それぞれが培ってきた経験を活かし、この資格を取得して、多くの企業の改革やDXをサポートする人材として活躍してほしい。

小笠原氏は最後に、次のように呼びかけた。
「ITCは経営とITをつなぐ役割であり、PGL4.0は経営と実行をつなぐ伴走支援の型です。早く学び始めた人ほど、実務で活用できる機会も広がります。IT人材の次のキャリアとして、ぜひITCに挑戦してほしいと思います」

 

<小笠原裕氏 著作物紹介>
●Web問題集
https://beyondthecrest.com/tests-itc-pgl4/

●Kindle書籍
『迷える若手ITCに贈る ITコーディネータプロセスガイドライン4.0実践の羅針盤』

・PGLを現場で使うための本。
・経験不足のITCが陥りやすい「ITツール導入ありき」から脱却し、経営に寄り添う変革の伴走者になるための考え方を示す。

 

●Kindle書籍
『”もっと迷える”若手ITCに贈る ITコーディネータプロセスガイドライン4.0実践の羅針盤【AI編】』

・AI時代のITCの役割を考える本。
・人とAIの働、業務設計、リスク管理、組織定着を設計する伴走者になるための考え方を示す。

 

●「note」
https://note.com/beyond_the_crest/n/n87b67a08656c?magazine_key=m26d199220732

●Webサイト記事
https://beyondthecrest.com/topics/itc/

 

取材・執筆 IT経営マガジン「COMPASS」編集部