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進む!「〇〇業のサービス化」-地域私鉄の場合

2016.11.14


東京で郊外の町に暮らすと、たいていはJRではなく私鉄の沿線となります。
もう40年くらい前でしょうか。野口五郎さんの「私鉄沿線」という歌がありましたが(古すぎる?)、
こんなところに線路つくっちゃう?という民家ギリギリを走って停車する小さな駅は、私鉄ならではの風景です。

私は東京の北部、西武鉄道の沿線で育ちました。池袋、新宿と埼玉県の秩父、川越方面を結ぶ路線です。

かつての西武線といえば、ストライキはしないし雪でもギリギリまで走る「止めない鉄道」として有名で、その鉄道マインドを誇りに思ったものです。

この西武鉄道が、今、グングン攻めていて面白い!

モノからコトヘ―製造のサービス化が言われていますが、
人口減や自動車の普及を背景に、鉄道会社も正確・安全に乗客を目的地に運ぶだけで成長が見えなくなってきました。
お客さんを喜ばせ、沿線を活性化する新しい事業に挑戦を始めています。

     運輸業のサービス産業化です。

その象徴と言えるのが、JR九州の観光列車ですよね。北陸や東北をはじめ各地でユニークな観光列車やレストラン列車が増えています。
山や海、色づく紅葉など、景色を楽しみながら、特別列車に揺られる特別な時間。
その土地ならではの美しい風景を活かしてこその企画だと思います。

東京近郊の電車は、通勤・通学の人をぎゅうぎゅう乗せてターミナル駅へ運びます。
線路の周りには住宅が並び、沿線にそれほど観光地もないのですが、
我が西武鉄道は、テーマ塗装の電車から始まり、電車を活かした新サービスにいろいろトライしています。

この週末は「同窓会列車」といって、西武線沿線の学校の同窓会を車中で開催する試みがありました。

そして、今年話題になった新サービスが、ゆっくり時間をかけて特別電車に乗り食事を楽しもうという、

  西武 旅するレストラン「52席の至福」です。

 

 

  この写真が、西武秩父駅でディナーの出発を待つ車両です。img_0374

普段の電車との違いはこちら

左が普通の黄色い電車

左が普通の黄色い電車

 

1車両52人限定で、おもに池袋―西武秩父を往復します(西武新宿駅着もある)
池袋や新宿発の下りがランチコース、上りがディナーコース。
予約開始とともにあっという間に埋まってしまい大人気です。

4両編成のうち2両が食事用、1両が調理用の車両。
原則週末に、電車のダイヤの間をぬって運行しています。

東京の私鉄は、2~10分間隔で電車が次々運行しますので、特別列車を走らせるためには綿密なダイヤ検討が必要です。
この電車は途中駅で運転停車をし、速度を調整しながら、特急なら80分程度で到着する区間を2時間半かけて走ります。その運行スケジュールや正確な運転ぶりも、鉄道好きな人にはたまらなく面白いようです。

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3両目のキッチン車両

 

 縁あって先日、ディナーコースに乗車することができました。

ときどきレストラン列車の車両を見かけていたので、それなりのわくわく感はありましたが、
沿線を良く知る者としては、「車窓は住宅街だし、そこを走りながら料理を食べて、楽しいのだろうか?」と、正直、少しさめた感じで見ていました。

しかし、百聞は一見にしかず。先入観はいけませんね。

 

ディナーコースの西武秩父→池袋(2時間30分ほど)に参加して感じたのは、

    「日常的な場所に非日常を創り出す面白さ」でした。

それはどんなことかというと…。

 

①身軽・身近さ

たとえば、JR九州のクルーズトレイン「ななつ星」。これに乗るには高額なツアー料金と休暇を準備し、スタート地点の博多まで移動が必要な大旅行です。

一方、西武のレストラン列車は乗車時間が3時間未満ですから、首都圏に住んでいれば、1日で十分楽しめます。
身軽・身近に参加できるのです。
私が乗ったときは、車いすの方もいらっしゃいました。

 

②乗って完成するシンプルさ

九州の観光列車は超豪華で内装デザインにも随所にこだわりがあります。
西武のレストラン列車は、隈研吾さんデザインで、四季をイメージした絵でおしゃれに塗装していますが、内装は落ち着いた色彩でシンプルなテーブルとイス。いわゆる華美な列車ではありません。
ところが乗車してみると、このシンプルさが食器やお料理、そしてサービス担当者の方々の笑顔を引き立たたせるのです。
人が乗り、走りだしてサービスが始まったときにベストな絵柄になる車両でした。
車内の様子はグーグルストリートビューにも掲載されています。

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料金は決して安くはないですが、
「凄すぎない」ので、ちょっと頑張ればなんとか手が届くのがポイントです。

 

③見慣れているから新鮮に見える

では、西武レストラン列車の最大のウィークポイント、沿線が住宅街ばかりで景色が楽しめない点はどうだったでしょう。

知っている沿線の景色ですが、
美味しい料理を味わい、会話や演奏を楽しみながら走っていると、とても新鮮に見えるのです。これは不思議な感覚でした。

むしろ見慣れているからこそ、自分の状況が「ハレ」であることが意識され、同じ景色が特別に見えてくるのかもしれません。
運動しているときの体育館と、卒業式のときの体育館では、見え方も違ってますよね。
駅によっては、駅員の方が見送りに手を振ってくれたり、ちょっとした心遣いと車窓を介したコミュニケーションにも暖かさを感じました。
これも一つの「沿線の楽しみ」作りということなのでしょう。

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埼玉県の飯能駅では、到着時と停車後の出発時に見送りが

 

鉄道は車窓を楽しむのがポイントだから、住宅地の鉄道は観光列車に向かない、というのは思いこみでした。
いつもと同じ光景にいつもと違う「コト」を組み合わせ工夫すれば、全部を変えなくても感動を提供できる。
他社に比べて不利な面があっても、コンセプトを明確にすれば、やり方次第で競争力を高められる。

西武鉄道のこのチャレンジ、拍手したいと思います。

これまで写真撮影にはあまり縁がなかったであろう車掌さんが、遠慮がちながら撮影に応じてくれたり、笑顔で出迎えてくれたり。
職員の方々も新しい取り組みにかかわることで少しずつ意識が変わっているように感じました。 
新サービスの展開は、働く方々にとっても、新しい世界と出会う新鮮な体験なのかもしれません。

 

今、ほとんどの業種で経営課題となっている「人口減を迎えての需要喚起」。

業界は違っても、持っている財産を活かし、新しい「コト」を加えることで、顧客が喜んでくれる新しいサービスを生み出せるはず。
そしてその挑戦は、働く人々にとっても、仕事の喜びを増やす新鮮な時間になることでしょう。

 

いろいろな業種でサービス産業化が進んでいますが、鉄道は地域社会の活性化という点でも大きな役割がありますね。

各地の私鉄のチャレンジを共有していきたいものです。
「うちの私鉄は面白い」という情報、是非教えてください。(^^ゞ