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精神科病院の厳しさと情報共有の価値<IT活用事例>

院長 岡田淳夫氏

2016年 冬号 2016.04.19


院長 岡田淳夫氏
「精神科の治療は、『今まで解決できなかったことも今日は解決できる』との心構えで臨みます。患者さんが心を開いてくれるよう、忍耐強く信頼関係を構築してゆきます」

止まることなく院内の情報を的確に共有
医療の質を向上させるシステム導入

チーム力を上げる
石川県金沢市・精神科病院 かないわ病院の場合

普段何気なく支払っている医療費。医療保険から医療機関に支払われる診療報酬は、実は診療科ごとに細かく点数が決められている。

「日本の診療科の中で基準点数が最下位なのが精神科です」

かないわ病院

かないわ病院は海に近い丘の上に立つ(左) 受付の様子(右)

かないわ病院(石川県金沢市)・事務長の大西義則氏はこう打ち明ける。精神科は医者一人あたりの患者数も最大1対48と多く設定されている。さらに身体疾病と違って薬の選び方や効き方も個人差が大きく、患者との信頼関係づくりが大切であり、診療時間も長くなりがちだ。

かないわ病院イラスト

企業に例えるなら「同じ売上を上げるのに多くのコスト・手間がかかる業種」といえるだろう。実際、「病床の稼働率が90%を切ると経営が厳しくなる」のだそうだ。

かないわ病院は金沢市北部初の精神科病院として1956年に設立された。主にうつ病・双極性障害などの気分障害や統合失調症の治療を行っている。岡田淳夫院長は病院の様子を次のように話す。

「以前は精神科への偏見もありましたが、徐々に地域に浸透してきました。最近は会社でも上司が部下に早めの受診を勧めるなど、社会の理解も進んできています」

診療報酬の厳しさもあって精神科でのIT導入は遅れているといわれるが、同病院は2014年9月、電子カルテの導入および院内情報システムの刷新に踏み切った。

法人名 医療法人 明仁会 かないわ病院
所在地 石川県金沢市普正寺町9-6
設立 1956年
理事長 永田巽
事業内容 精神科、心療内科、児童精神科、循環器内科、内科
従業員数 142名
病床 189床
URL http://kanaiwahp.com/

止まらないシステムを各社に提案依頼

IT管理課・課長の河原直人氏は、新システムに求めたものを次のように説明する。

「精神科の場合はどれだけたくさんの患者さんを看るかの効率化ではなく、情報の質を上げ、コ・メディカルスタッフと共有することに主眼があります」

同病院では24時間365日止まらずに稼働できる院内システムの基盤整備(仮想化やサーバーの冗長化など)や画像・動画活用の必要性も感じており、先進的な病院を見学し議論を重ねた後、プロジェクトをスタート。ITベンダーからシステム提案を受けた結果、「一番、面白く、“止まらないシステム”という要望に応えた」(河原氏)、富士ゼロックス北陸の提案を採用した。

「当社が16ベンダーのシステムを統率し、議論を深めながら各社がモチベーションを高められるようサポートをしました」と、プロジェクト責任者である同社SE2課の課長・川上正春氏は振り返る。

かないわ病院の河原課長は、技術的な検討と同時に院内のとりまとめにも奔走した。「導入に反対する声もありましたが、理由をしっかり聞き、例えば壊すのが心配な方には『壊しても大丈夫』と声をかけました」と振り返る。ITに苦手意識を持っているスタッフもいるので、理解・同意を得るプロセスはとても大切だ。

カルテ情報の共有で患者をより深く理解

こうして約4カ月の短期間で完成した院内システムは、チーム医療の質向上に効果を発揮した。

「電子カルテは関連スタッフ全員が読み、記入できますので、他のスタッフの見立てに気づかされたり、連絡事項が確実に共有できるなど、正確さが向上しました」と岡田院長は説明する。言葉で伝えにくい患者の様子は画像や動画でも共有できるようになった。

かないわ病院のシステム概要

さらに、大西事務長は「電子カルテ導入後、新卒の正看護師が応募してくれるようになったのもうれしい効果」と微笑む。導入前は電子化を嫌って看護師不足になる心配があったが、杞憂に終わったどころかプラスに働いた。

スタッフ間のコミュニケーションは密に行っている(左) 事務長 大西義則氏(中央)  IT管理課 課長 河原直人氏(左)

スタッフ間のコミュニケーションは密に行っている(左)
事務長 大西義則氏(中央) IT管理課 課長 河原直人氏(右)

他方、受付業務においては、病床の空き状況や予定がリアルタイムにわかるため、的確な予約受付が実現。回転率が0.78から0.9に上昇した。

同病院のIT活用は単純な費用対効果だけでは測りにくい、サービスの質向上やモチベーションアップなど総合的な経営効果を上げているといえる。

「困難でも、それだけの意味があればやってみる。やってよかったという気持ちが湧いてくれば次の困難にも前向きになります。患者さんと向き合うときと同じですね。困難、ウエルカムです」

岡田院長は穏やかな笑顔でこう締めくくった。

ITベンダー紹介

川上正春氏(ITコーディネータ)

富士ゼロックス北陸株式会社
ソリューションサービス統括部
システムエンジニアリング部
SE2課 課長
川上正春氏(ITコーディネータ)

システムの総合提案およびベンダーのとりまとめを行い、プロジェクトをサポートした。川上氏は、ITコーディネータの資格を持ち、経営の観点からシステム提案ができることが強みである。

担当者の河原課長はその様子を次のように評する。

「川上さんなくしてこの結果は得られなかったと思います。経営面まで考えてくれるITベンダーは初めてで、話が通じる貴重な方です。時には喧嘩になったりもしましたが、濃い議論ができ日付が変わることもよくありました」

川上氏は「良い意味で病院のイメージを覆され、プロジェクトの成功を確信しました。今後はシステム評価の指標を示し、PDCAを回すお手伝いをしたい」と話している。


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