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人を前面に出す仮説検証型Webサイト<IT活用事例>

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2016年 冬号 2016.04.25


<Webサイトで何を伝えるか>
技術力をPRする「製造業のパターン」にならない
・まずは工場見学に来てもらおう
・技術や所有機械よりも「人」出す
・情報への反応を見ながら仮説検証型のWebサイト運営に

人間力を持つ多能工化で生き残る!
潜在顧客を発掘する仮説検証型サイト

多様な能力開発 富山県高岡市・金属加工・金型製造 フジタの場合

ビジネス環境が変わり、これまでの方法では売上が伸びなくなったときにどうするか。

雇用を守り、腹を据えて社内改革に取り組む選択をしたのが、富山県高岡市でアルミ鋳造型や金型製造を手掛けるフジタの梶川貴子社長である。

リーマンショック以上に、製造の海外移転が影響したという。

社内の様子。 技能検定や資格取得も 奨励している

社内の様子。
技能検定や資格取得も奨励している

代表取締役 梶川貴子氏

代表取締役 梶川貴子氏
ファッション業界を経てフジタに入社。経営者であった父親が他界した15年後、代表に。「代表になったら言い訳できない。腹をくくるしかないが、やりたいことができる」
梶川社長の後ろに見えるのはグッジョブカード

法人名 株式会社フジタ
所在地 富山県高岡市福岡町荒屋敷522(近隣に第二工場あり)
設立 1975年
従業員数 15名
事業内容 アルミ鋳造型、プレス金型等各種設計・製作
URL https://www.fujita-k.co.jp/

見えなかったものに気づく 目標を持って技能を高める

「新しい取引先を増やすには、日本でしか、自分たちにしかできないことを持つのが近道です。ただ、良い機械を導入しても使う人によって生み出すものが変わります。ならば人を育てようと」

そう決意した梶川社長は、工場内の改善活動、社員の教育に力を注いだ。

梶川社長

例えば、コンサルタントの吉田誠氏の薦めで取り入れた「グッジョブ(GoodJob)カード」。社員が、他の社員の仕事ぶりで良かったと思うことを書き出していくものだ。

「最初は何を褒めたらよいのかわからない・気づかない状態でしたが、書こうと思うと見えてくる。見つけて伝えること自体が社員の成長につながっていると感じました」と梶川社長。

また、職務に応じた目標管理を行い、技能検定へのチャレンジや接客レベルの向上、また現場改善の具体的な取り組みなど、一人ひとりの成長ステップを見える化し、実行をサポートしている。

目標への進捗を確認する目標計画進捗会議に前月同席している吉田氏は、「2年目に入ると、役職者以外の社員の方からも活発に意見がでてくるようになりました」と変化の様子を話す。

これらの取り組みが目指すところは、基礎的・汎用的な能力を備えつつ技術面での多能工化を進め、様々な顧客ニーズに応えられる製造集団づくりである。

この方針を取引先に伝え、新たな仕事を獲得する接点となるのがWebサイトである。

製造業らしからぬ「人が中心」のWebサイト

一般に、製造業のWebサイトは、得意な技術や所有する機械、製造実績をPRするものが多い。しかし、フジタの場合、「パッとわかる強みを表現できないので、サイトのストーリーが作りにくかった」(梶川社長)。Webサイトは持っていたものの更新がはかどらなかったという。

「今までの製造業のイメージとは異なるサイトを作りたい」と考え抜いた末、たどり着いたのは、力を入れて育成している「人」を前面に出し、サイトを訪れた顧客のニーズを探ることだった。

実際に会社に来てもらえるよう工場見学も積極的にPR。サイトのアクセス分析によって顧客が何を期待しているかをつかみ、発信する情報を変化させていこうという計画だ。

新しいWebサイトの構築を任されたアイティ経営コンサルタントの中谷英之氏は、「どんな受注をもらうかなど固定的なゴールを決めず、未来の潜在的な顧客を獲得する試みであり、仮説検証型のサイトと呼んでいます」と説明する。制作にあたっては、同社の長棟京子氏が再度、梶川社長にヒヤリングし、イメージを固めていったという。

フジタの改善活動とWebサイトの役割

新Webサイトは2015年11月にオープン。サイト内に社長ブログとスタッフブログを置き、情報をまめに更新している。

「今後は製造工程などのコンテンツも充実させつつ、『面白いことをやっている会社だな』と感じてもらえるようにしたい」と梶川社長は意気込みを話す。

金属アートのミュージアムを クラウドファンディング サポーター募集中!

製造業のステレオタイプでは収まらず発想豊かな梶川社長は、近々、金属アートのミュージアムを設立する計画とのことだ。

ITベンダー紹介

アイティ経営コンサルタント株式会社

アイティ経営コンサルタント株式会社
専務取締役 中谷英之氏(写真左)
(ITコーディネータ)
統括部長 長棟京子氏(右)

富山県魚津市に本社をおき、Webサイト企画制作・システム開発およびIT経営コンサルティングを手掛ける。富山県内企業のWebサイト制作実績が豊富。

フジタのWebサイト制作では、今までにない視点が求められた。同社の支援をする吉田氏は同じITコーデイネータの中谷氏がいたことで、フジタの経営方針やサイトに求めるものを共有しやすかったという。

新しい試みとあって制作現場がコンセプトをつかみきるまで少々時間を要したが、「人」を前面に出す構成、アクセス分析をしながらコンテンツを増やしていく「仮説検証型ホームページ」を実現した。

「多能工」を「多脳工」と表現し、より「人」のイメージを高めたのは同社のアイデアである。

サポーター紹介

よしだまこと事務所 代表取締役 吉田誠氏

よしだまこと事務所
代表取締役
吉田誠氏
(ITコーディネータ)

富山県を中心に、企業の経営支援・IT活用支援で豊富な実績を持つ。

地域の支援機関や金融機関とのつながりも深く、梶川社長とは、富山銀行の経営者研修会で講師を務めた際に出会った。

フジタでは、人材育成にかかわる経営支援を担う。会社・部署・個人の目標達成支援や、社員のモチベーションアップとチームワーク醸成支援を行っている。

また、Webサイトのリニューアルにおいては、今後のビジネス展開を想定してサイトコンセプトを整理し、ITベンダーへの橋渡しを行っている。

梶川社長は、「吉田さんに入ってもらって改善活動を進め、社員が自分の意見を積極的に発言するよう変化してきたのがとても大きい」と話している。


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