一部品ごとの労働生産性を把握!
生産管理・工程管理製造業100人以上タブレット・スマホ・アプリ生産管理・原価管理
2016年 春号 2016.06.10
半谷製作所 代表取締役社長 半谷眞一郎氏
システムの改良プロセスが人材育成に
経営の見える化
愛知県大府市・自動車部品製造 半谷製作所の場合
自動車のABC-アクセル、ブレーキ、クラッチという、高い信頼・技術レベルが求められるセーフティーパーツ・足廻り部品を得意とするのが、愛知県の半谷製作所である。一次サプライヤーとして、自動車メーカーの設計部門と積極的に意見を交わし、図面提案を行っている。
会社名 | 株式会社 半谷製作所 |
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所在地 | 本社:愛知県大府市北崎町大島13-3 衣浦工場:愛知県半田市洲の崎町2-7 中国とインドネシアに現地法人あり |
設立 | 1936年 |
従業員数 | 174名 |
事業内容 | 自動車・冷熱の部品製造 |
URL | http://www.hanya-net.co.jp/ |
※プレモフォージング®…金属の板から作るプレス加工と、金属の塊から作る鍛造加工を融合し、プレス機で鍛造品のような形を創る工法。切削品と比べ3〜4割のコスト削減が可能。
「変化」を前提にITでスピード感を
かつてはエアコンや航空機の部品を手がけた時期もあり、自動車部品に関しても内容は10年間で60%は変化しているという。
「歴史を見ても、“変化”は世の道理です。今の仕事が10年後になくなっても生きていける会社であるよう、従業員を育て投資をしていくことが大切です」
半谷眞一郎社長が重視するのは、変化を前提とした人の成長と改革のスピード化だった。
「この部品の利益はどうなのか、どこに問題点があるのか、皆で腑に落ちた仕事をするために」2005年、生産管理システムを導入。現在は、一部品ごとの労働生産性まで把握できるようになった。
もちろん一朝一夕に実現したわけではない。生産管理システム導入から10年近くかけて、段階的にブラッシュアップしてきた。
総務部総務課の新垣綾翼氏は次のように振り返る。
「まずは現場が“生産管理板”と名づけたシートに毎日の実績を記録し、データ化して時間当たりの出来高(個数)を見える化しました。システムが使いにくい部分はデータベースを作って改良したり、欲しい数字がすぐ取れるようExcelのマクロを組んだりしました」
半谷社長が導入の号令をかけ、活用や改良は、従業員が主体となって進めた。「10年後に主役となれる人材を育成したい」という方針に沿った体制だった。
「毎月の会議では、労働生産性の目標と実績を画面に写し、皆で見ます。原因となる機械の故障のことや改善方法など、活発に意見が出ています。システムは作りっぱなしではなく、成果物を皆で見ることが大切だと感じます」
取締役管理本部長の糟谷好伸氏は、このように実感を話す。意見を出し合う会議の場があってこそ、PDCAが回っていくのである。
同社を長年サポートしているARUの水口和美氏は、「このような“積み上げ型”のシステムは珍しい取り組みです。KPI(目標達成のプロセスに必要な指標)は変化するので、社内で改良できるのは大きい。推進にあたっては、半谷社長のリーダーシップと従業員の皆様の熱意を強く感じました」と言う。
これらの結果、スピード経営の実現、製造機械の稼働にゆとりを確保し新規受注に成功するなどの効果が見られている。
生産情報はタブレットで 今後はIoTの活用も
昨年は、手書きの「生産管理板」をタブレットに置き換えた。現場の実績がシステムにダイレクトに蓄積され、実績把握や異常の検知もスピード化された。さらに、IoTに対応した機械の導入により、生産情報や機械の稼働情報を自動収集することも予定している。
「日々、多様な仕事がある中で、ITも取りこぼさずに推進してきたことは胸を張れると思います。まだまだ発展途中ですから、引き続き取り組んでいきます」と糟谷取締役は話す。
同社は新事業開発へのトライアルも続けている。現在力を入れているのが、新工法「プレモフォージング」である。
「プレモフォージングの展開、既存事業ではさらに開発力を高めてお客様の中に入り込むこと、そして海外マーケットで貢献できることに力を入れていきます。その結果として、『この会社で働いてよかった』と思われる会社にしたい」
●半谷製作所は、攻めのIT経営中小企業百選2016に認定されました。
(写真は2016年6月9日の発表会にて)
サポーター紹介
ARU
代表取締役
水口和美氏
(ITコーディネータ)
愛知県を中心に、多数の企業のIT経営実現を支援し、実績を上げている専門家。システム導入をともなう経営改革支援はもちろん、幹部研修や後継者育成、新事業育成(イノベーション)をサポートする機会も多い。
所属するITコーディネータの組織であるNPO法人ITC中部では、地元企業を表彰する中部IT経営力大賞を継続的に実施しており、地域全体の活性化への基盤づくりにも寄与している(2011年度まで中部経済産業局主催で実施されたものをNPOが引き継いだ)。
半谷製作所とのかかわりは10年に及ぶ。新システムを使いこなすための支援は、将来を見据えた人材育成や社員主体の改善活動へとつながった。近年は、新しい取り組みを進めるための補助金申請などもサポートしている。水口氏は、同社が依頼した専門家の中でも付き合いが長いという。
半谷社長は、「何でも話しやすく、上からものを言うようなことがない水口さんの人柄が大きい。さらにご指導いただき、お互い研鑽をしていきたい」と話している。