求人力を高めるWebサイト活用 ─その工夫点とは?
2018年 春号 2018.03.14
「働く人」を中心に社内の雰囲気を伝える
千葉県習志野市 ─ 製造業・イシバシ ─
「今、社長としての主な仕事は採用と従業員の定着です。人がいなければ売上もストップですから」
東京湾にほど近い千葉県習志野市に本社工場を構えるイシバシは、機械製品のステンレス溶接加工を手掛ける。二代目の石橋純治社長が最重要経営課題に位置付けるのは、技術力を持った人の育成である。
会社概要 | 株式会社イシバシ |
住所 | 千葉県習志野市茜浜1-2-20 |
設立 | 1973年 |
事業内容 | 食品機械等の製作・組立、ステンレス材等の精密板金及び製缶溶接加工 |
URL | http://www.ibk-e.net/ |
製造業は「インダストリー4.0」で工場間での連携と自動化が進むと言われているが、実際の製造業の内容は多様だと石橋社長は言う。
「私たちは錆びない材質のステンレス溶接をメイン技術としています。食品機械や医薬関係のプラントものが多く、すべてオーダーメイド・多品種少量生産・手作りです。メーカーのデザイン設計を理解し、形にするために、かなりの工程を一人の技術職が担います。参入障壁は高めな一方、職人を育てるのは大変なこと。この地域では“職人争奪戦”です」
そのために何をすればよいか。
石橋社長は、かつては自らの手でホームページを作成したが、なかなか「検索でヒットしなかった」。地元の習志野商工会議所に相談し、7年前にITコーディネータ野中栄一氏に依頼しホームページをリニューアル。顧客が探すであろう具体的な案件名を意識してSEO対策を行った。
すると、数か月に1回程度だった問い合わせが週に数件と大幅に増加。イシバシの技術を評価し、信頼関係を構築できる取引先をコツコツと開拓しててきた。10年前に比べて売上は50%近く上昇しているという。
会社をPRする手段としてWebサイトの効果を実感した同社は、人材獲得競争が激しくなる情勢を受け、2年前に求人に特化したWebサイトを開設した。
→ イシバシのリクルート用サイト http://recruit.ibk-e.net/
特徴的なコンテンツを下記に紹介する。
求人用のサイトでは、働く仲間の様子を強調してミスマッチを防ぐ |
背伸びせず伝えて ブランド力が向上
サイトを見てまず感じるのは働く人の笑顔と「声」だ。
そして、「弊社の特徴」の欄に、「なぜ、弊社の業績が伸びているかと申しますと、ひとえにステンレス加工業の「職人の腕」と「会社の信頼性」がクライアント様から評価されているためです」と書かれているのが印象的だ。
石橋社長は、「誤解なきよう、入社してから『こんなはずじゃなかった』とならないよう、背伸びせずに会社の状況を伝え、どんな仲間がいるかについて詳しく書きました。情報はたくさん出した方が良いと思います」と説明する。
サイト作りにあたっては、方向性を決めた後、社員へのインタビューと執筆など、コンテンツづくりも依頼し、社内の負荷がかからない法方法を選んだ。
専門的な職種ゆえ応募が殺到するわけではないが、応募者はサイトで会社の内容を確認しており、ブランド力が向上している手ごたえがあるという。
取材時(2017年秋)は、偶然、事務職の求人中だったが、取材中に何件も問い合わせが入っていた。社風や雰囲気、働く人たちの様子をきちんと発信することの大切さがうかがえた。
工場はセル型。 一人ひとりの技術力が勝負 |
社内では、会社の理念・石橋社長の考え方を定期的に伝え、社員旅行の開催などコミュニケーションの機会を増やしている。工場内の幹部社員にはタブレット端末を配布し、メール等連絡業務に活用しているという。
売上を伸ばしているイシバシはすでに工場に隣接する土地を取得済み。人の課題をクリアし、工場を増設して生産力の拡大を図る計画である。
サポーター紹介
株式会社ナーツ野中栄一氏(ITコーディネータ)
http://www.narts.jp/
イシバシは習志野商工会議所を通じて専門家のサポートを得ていたが、Webサイトリニューアルにあたり、同分野に詳しいナーツ・野中栄一氏の紹介を受けた。
ホームページリニューアルでは1週間足らずで問い合わせが急増し、第二ステップとなった求人サイトについても同社に依頼した。
石橋社長は「プロに任せることで私は自分の仕事に専念できます。Webを作る技術だけでなく、経営視点で事業の中身を理解してくださるので、良いものができました」と感想を話している。
野中氏は、石橋社長の勉強熱心な姿、提案を自分事として理解し、素早く行動に移す様子に感銘を受けたという。
「ネットでは小さなチャレンジを何回も継続的に行うことで成果が出ます。ここをご理解いただけたことが、ご支援した弊社が驚くほどのHPからの急激な顧客増、それに伴う求人サイトからの採用活動の成功につながったのではないでしょうか」と振り返る。今後も成長に応じたサポートを続けたいとのことだ。