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事業承継を見据えてデータの徹底活用に挑んだ肉の卸売会社

2018年 秋号 2018.09.24


日々の事業活動を数字で捉え、そして…
  熊本県熊本市 肉の大栄

「改善策を考えようにも、判断材料がありませんでした。利益構造の詳細はどうなっているのか、データが欲しいと…」
熊本県熊本市の肉の大栄は、黒毛和牛を流通させた老舗。飲食店などへの卸売のほか、昔ながらの肉の量り売りをする店舗を構える。現在、代替りを見すえて準備を進めている。

高田博子社長の後継者に決まった次女の経理担当・古賀佳奈氏は、経営の勉強を重ねる過程で、税理士から粗利率の低さを指摘されていた。しかし、どこが問題なのか原因がわからない。

会社概要 有限会社 肉の大栄
住所 熊本県熊本市中央区新町3丁目9-17
設立 1990年(創業 大正4年)
従業員数 11名
事業内容 肉の卸売・小売
URL http://nikuno-daiei.com/

 

販売管理システムをもっと使いこなす

事業の8割を占める卸売部門は、経験豊富な営業担当者が得意先を回り見積や受注を行っている。取引先ごとの原価や利益について詳細データは取れていなかった。さらに肉の仕入価格は日々変動する。

古賀氏は利用中の販売管理システム「楽一」(カシオ計算機)の徹底活用を決意した。

「これまでは伝票発行にのみ使っていましたが、分析ツール(楽らく経営リサーチ)もついているので、きちんと入力すれば欲しいデータが得られるのではないか。カシオ計算機の担当者に疑問点をたくさん質問し、活用法を教えていただきました」

打ち合わせのたびに疑問点をびっしり書いたメモをもとに質問。カシオ計算機の担当者も、根気よく丁寧に使い方をレクチャーしてくれたという。分析ツールをどう使えばほしい数値が取れるか、徐々にわかってきた。

 

得意先別・商品別のデータを皆で共有

古賀氏が一番欲しかったのは、得意先別・商品別の粗利・粗利率。どの取引を改善すればよいか判断できるからだ。
分析ツールの活用でこの数値が得られ、利益率が極端に低い取引が明確になった。

つぎは、この数値をもとに日々の活動をどう変えていくかだ。

肉の大栄では、得られたデータをミーティングの際に「皆で見る」ことを始めた。

同時に、見積伝票入力時には該当商品の平均仕入価格が画面に表示されるようにし(プリントはされない)、粗利が出ない低い見積に気づけるようにした。

 


すると、社内に変化が起きた。

営業担当者自らが改善点を発見し、適正販売価格を考え、交渉を行うようになったのだ。努力して粗利率が上昇すれば、その結果も共有される。

こうしたケースでは経営者が数字を見て担当者を叱咤しがちだが、現場経験豊富なスタッフだからこそ、上から細かく指示するより見える化を行い、一人ひとりが自主的に考えられる場づくりが有効であることがわかる。

良いサイクルが回りだし、2018年に入ると粗利率が適正レベルに向上した。
古賀氏自身の毎月の処理作業も2週間から3日へ短縮された。

この取り組みに先立ち、肉の大栄は店舗の売上アップへ、商工会議所の紹介で小規模企業持続化補助金を活用し、ホームページの改修・ネット販売の強化、販促広告などを行っている。

「若い世代の方にも足を運んでいただける店にし、さらに地域を元気にしたいと思います」
見える化と情報発信──IT活用を通じて事業承継の手ごたえを得た古賀氏は、今後の展望を笑顔でこう話した。


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