コインランドリーの常識を変える! IoTを使った新サービス
2019年 春号 2019.05.26
尾道で作る、世界で戦える洗濯機 「IoTコインランドリー」への挑戦も
―――広島県尾道市 クリーニング機器製造・山本製作所
「アジア、米国に続き、2018 年5月にヨーロッパでのスタートを切りました」
風光明媚な観光の町でもある広島県尾道市。この地に本社工場を構え海外へ販路を広げているのが山本製作所である。
国内のクリーニング店は減少傾向だが、コインランドリーや産業用洗濯機で売上を伸ばし、山本尚平社長が開拓してきた海外での売上も10%を占めるまでになった。
「米国に進出した際、溶剤を使わず水で洗うウエットクリーニングに脱水や乾燥機能を備えた特徴的な製品が注目され、堅牢で長持ちするとの評判とともに伸びてきました」
山本社長は突出した製品がキーになったと振り返る。
会社概要 | 株式会社山本製作所 |
住所 | 広島県尾道市長者原1丁目220-19 |
設立 | 1956年(創業:1947年) |
従業員数 | 180名 |
事業内容 | 業務用洗濯機全般の製造 |
URL | https://www.onomichi-yamamoto.co.jp/ |
働く人を大切に付加価値向上を探求
海外に進出しても製造は一貫して尾道で行っている。
「人本主義を掲げており、人を育て、アウトソーシングは抑えて部品から完成まで一貫生産をしています。同時にコスト競争力も備えるべく、省力化への努力やロボット・設備への投資も行っています。こうしたことは一朝一夕にはできませんので、当社の強みといえます」(山本社長)
また、ロボットが担える工程は積極的に移行している。取材時は無人化できる新工場を建設中だった。
しかしこれは「人を減らすため」の投資ではない。人が担うべき工程は必ず残り、また同社は現在約50億円の売上を100億に伸ばす計画を進行中で、力を発揮してほしい業務は増えるからだ。
生産工程はすべてシステムで管理し、製品のトレーサビリティを実現。長年使用しても、メンテナンスや部品交換に対応でき、付加価値を高めている。
3社連携で挑戦したIoTコインランドリー
2017年には新たな事業として、wash-plus(事業者)、パーク(ITシステム)との3社連携にて、IoTを活用した「スマートランドリー」を開発(中小企業庁・新連携計画事業に採択)。
「スマートランドリー」は、スマートフォンアプリを使ってコインランドリーをより便利に利用できるサービス。洗濯機側にIoT装置がついており、スマホから空き状況を確認したり、終了のお知らせが届くほか、洗濯機のロックや窓を曇らせるなどの制御が可能だ。
プロジェクトを推進してきた営業部課長の高岡耕司氏は次のように説明する。
「お客様の声をきっかけに、当初は支払いのキャッシュレス化からスタートした企画でした。スマホアプリなら伸張性もリアルタイム性もあります。洗濯物を見られたくないお客様用に窓を曇らせるなど、今まで気づかなかった発見もありました」
このシステムにより、コインランドリー事業者は、会員制度による顧客の囲い込みが可能となった。
「空いている時間帯に割引の案内をするなど、プッシュ型で販促できるのも特徴です」と高岡氏は言う。
企画当初から社内の開発担当と議論を重ねており、同社の洗濯機がすでに高性能であることから、製造面は比較的スムーズだった。むしろ仕様を決めるまでの検討プロセスが新規事業の大変さだったと打ち明ける。そして、「市場は変化を続けていくので、改善は永久に続くでしょう」と見通している。
こうした挑戦経験も、同社のモノづくりの力となっていくに違いない。
「ヨーロッパはモノづくりに必要な独創性を持つ」と敬意を表する山本社長は、最後に、海外に出る意義を次のように話した。
「世界にチャレンジすると技術者は自分の力が試せるし、海外志向の若者も入社してきます。日本は周りを海に囲まれる島国ですが、いろいろな意味で殻を破れるのではないでしょうか」