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スキルの洗い出しと技能育成で利益の出る多品種少量ビジネスを

製造する部品の例

2021.12.04


多品種少量生産にどのように対応していくかは製造業の課題の一つ。多様化の時代、他の産業においても、きめ細かい個別対応が求められ、「小回りが利く事業体制づくり」が急務だ。

1個、2個の製造が約半分を占める

この課題に正面から取り組んできたのが、電子部品や半導体関係を中心に機械部品加工を手掛けるプラスエンジニアリングである。

「価格を上げすぎず多品種少量対応するのは、皆が嫌がるゾーン、見方を変えるとブルーオーシャンなのです。この世界で“儲かる”方法を追求してきました」
取締役・仙台事業所長の浅野謙一郎氏はこう打ち明ける。本社は東京だが営業機能が中心で、多くの社員が勤務する工場は宮城県村田町にある。

プラスエンジニアリングでは1個・2個の受注が全体の半数以上を占める。単価も5000円〜1万円が中心だ。

2009年から、5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)を基盤に改革を続け、納期の遵守、利益率上昇を実現してきた。
その柱が、①社員の能力を高め多能工を増やす人材育成と、②時間のかかる生産計画や正確な見積作成に寄与するIT活用である。

会社名 プラスエンジニアリング株式会社
住所

東京都豊島区東池袋1-18-1 Hareza Tower12階
【仙台事業所】宮城県柴田郡村田町大字村田字西ヶ丘21

代表者 代表取締役社長 
鈴木重人氏
設立 1974年
従業員数 105名
事業内容 生産設備用特注部品、製品用試作開発部品の製造
URL https://www.pluseng.co.jp/

 

3か月単位の目標設定、国家検定は基本給に反映

プラスエンジニアリングの工場には、「専門能力マップ」「国家技能検定取得者」など、技能にかかわる情報が掲示されている。
「以前は不良品も多く出ていたので、これを減らしたい。それには技能の基礎を磨くことが第一です。当社では3か月単位で個人目標を設定し、クリアすると賞与時に賞金が加算されます。また、技能検定レベルに応じて、基本給に技能給が加わります」と浅野氏は説明する。
働く側は、自分の技能向上が会社に貢献するという喜びを得られ、「何をすれば給与を上げられるのか」が明確になるので、将来設計も立てやすい。

受注内容に応じて自動的に生産計画を作成

IT活用の焦点となったのは、生産計画に時間を要していることの解決と、個別採算ラインを把握し見積金額の設定をルール化することだった。
生産計画の省力化には、自動生産スケジューラ「Asprova」を導入した。ただ、こうしたシステムを使うには、元となるデータが必要になる。
同社ではモノづくりの工程を分解し手順を見える化し、さらに社員一人ひとりの技能(どのレベルの作業までできるか)を明らかにした。これらのデータを用いて、機械の空き状況と合わせて作業スケジュールの自動作成を可能とした。

見積額の基準に関しては、加工実績を人や機械の作業時間に落とし込み、予測原価を参照できるシステムを構築。示された基準を下回る見積を出す際は、上長の承認が必要となる。
これらの仕組みで、生産計画の自動化、採算が取れない見積の回避を実現し、多品種少量で利益を確保する体制を構築できた。

「製造業のデジタル化は、経営の源である利益をどう確保するかのアプローチが大切です」
浅野氏は本質的なところをズバリと指摘した。

IoTを使った見える化も経営改善に活かしてこそ意味を持つ。同社は現在、タブレット端末を利用した実作業時間の正確な把握や、機械の稼働を簡単に把握するシステムにトライしたり(宮城県「先進的AI/IoT活用ビジネス創出実証事業」コー・ワークス社が支援)、さらに進んだデータ活用を試みているところだ。

そして、今、AIの活用にチャレンジ中だ。
「以前試した受注予測は踏み込んだデータが得られませんでした。そこで、今は、ベテランの営業担当が感覚的に持っている受注確度予測をAIが学び、経験が少ない人のアシストができないかと取り組んでいます」
実証実験の結果が待たれるところだ。


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