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「見える化」を進め、次の経営戦略を まずは書類の電子化と効果の共有から

専務取締役 瀬口力也氏

2015年 秋号 2016.01.08


トラックスケールの例

トラックスケールの例

荷物を積んだトラックがそこに停まると、総重量が計測される。トラックの重さをマイナスすれば、荷物の重量がわかる。これは数カ所に設置されたセンサーを使って、t(トン)レベルの計量を行う「トラックスケール」というはかりである。

代表取締役 恵藤敏郎氏

代表取締役 恵藤敏郎氏

千葉県千葉市の恵藤計器は、大型の電気式はかりや工業用はかりのディーラーとして県内産業を支えている。取引や証明に利用するはかりは法律で2年に1回の検査が義務付けられており、検査やメンテナンスは事業のもう一つの柱となっている。

同社はまもなく創業70年を迎える。計量器に関するノウハウや誠実な事業姿勢によりメーカー・取引先などからの信頼を積み重ねてきた。3代目の経営者である恵藤敏郎社長は、一般社団法人千葉県計量協会の会長を務めている。
(ページ冒頭の写真は、専務取締役 瀬口力也氏)

社名 恵藤計器株式会社
所在地 千葉県千葉市美浜区新港142-3
設立 1950年
代表者 代表取締役社長 恵藤敏郎
事業内容 計量器全般の販売、はかりの製造・修理・保守管理
従業員数 20名
URL http://www.etokeiki.co.jp/

後継者になるべきか…判断材料を得て決断

しかし恵藤計器は社内に課題を抱えていた。「4代目の社長選び」である。

幾度となく就任要請を受けたのが、恵藤社長の三女の夫である瀬口力也専務だった。結婚当時は大手企業に勤務しており、継ぐことは考えていなかったという。

「会社を辞めて恵藤計器の経営者の道を歩むべきか」──迷っていた瀬口専務は、前職の先輩であった中小企業診断士の森雄一郎氏にアドバイスを求めた。

森氏は財務諸表の分析、社長や社員へのインタビューなどを行い、恵藤計器の現状を総合的に分析した。産業向け大型計量器の市場は県を越えた競争が少なく安定度がある。一方で新分野に挑戦する余地もあるとわかった。

「後悔しない選択へ判断材料を提供しました」と森氏は振り返る。

事業環境を理解して手ごたえを得たこと、さらに「一度きりの人生だから、サラリーマンとは違う成長をしたい」と思えたことで、瀬口専務は腹をくくった。

有効な情報が紙のまま まずはスキャナでPDF化

2014年8月に入社し、半年間は業界・事業の基本を学習。次に手がけたのは「事業戦略検討に向けた経営の見える化の推進」だった。業務の実態を把握し、瀬口専務自身が打ち手を定めるためだ。

同社は押印済の見積書、受注実績、工事指図書、検査サービスで作成する検査成績書など、書類の大半を紙で運用していた。社内にはファイルがたくさん積まれており、過去の実績や見積を調べたくてもすぐに見つけられない。

そこで、森氏のサポートを受けつつ、取り組んだのが、「書類の電子化と共有」だった。

パソコンで作成している帳票はプリントを中止し、データのまま保管。紙の書類はPFUのスキャナ「ScanSnap」で読み取りNAS(ネットワーク接続ハードディスク)に保存する作業を進めている。不要な書類は適宜廃棄している。

スキャナ(「ScanSnap iX500」)

スキャナ(「ScanSnap iX500」)を使って紙の書類を電子化している(左)。PDF化したファイルはNASに保存して共有。紙の保存が不要な書類は廃棄(右)(右の写真提供:恵藤計器)

「工事指図書は手書きの書き込みもあるので、スキャナで読み取ります。一件ずつファイル名に得意先名を入れて探しやすくしました。見積書は枚数が多いので、一括読み取りをしています。近々、スキャナに付いているOCR機能を使って単語で検索できるようにしたい」と瀬口専務は話す。

また、Excelで作成している検査成績書は、顧客ごとのはかりの利用状況を知る大事なデータだ。上手に使えばメーカーの修理終了時期に合わせた提案営業なども可能になる。各ファイルをサーバーに保管して共有し、時期がきたら、工事報告書の内容と合わせてデータベースを構築したいとのことだ。

電子化の取り組みは、業務が定型化し特に不都合を感じていなかった現場に「ムダがなくなった」「探しやすくなった」などの実感をもたらした。この「小さな成功」は瀬口専務が進める新しい体制づくりの具体化の第一歩となった。

並行して、メンテナンス事業の粗利を把握する目的で、営業担当者と原価把握作業を進めているが、趣旨を理解し意欲的に改善提案を行う担当者が出てきているという。

「経営の見える化」というと詳細データを集めるためのシステム化を思い浮かべるが、進め方やプロセスは一律ではない。瀬口専務は次のように力を込める。

「理屈よりも、皆が『良くなった』と感じられることが大切です。そして最後は『必要だからやるのだ』という旗振り役の気合にかかっているといえます」

代替わりの予定は2年後とのことだ。

恵藤計器 経営の見える化への取り組み

サポーター紹介

中小企業診断士 森雄一郎氏

中小企業診断士 森雄一郎氏

職場の後輩であった瀬口専務の要請を受け、恵藤計器の経営分析を行ったことから支援をスタート。その後、後継者育成プログラムへの参加指南や専門家の紹介、電子化提案など、事業承継にかかわる様々なサポートを行っている。「中小企業においては覚悟をもった後継者の育成が急務」という。

瀬口専務は、「机上の分析で終わらず、現場を理解して作業レベルで一緒に考えてもらえるのがありがたい」と話している。


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