高い商品開発力を活かす
「数字意識」と販売管理システム
2025.10.20
経営数値を知る仕組みが改革のスタート!
―広島県・食品製造業 福々庵

福々庵が開発した人気商品「シャリもち葛バー」。色とりどりの様々な食材を、ひんやりかつ食べやすくつくりあげた
色とりどりのその姿は一見アイスクリームだが、溶けずに噛みやすく、しなやか。
高齢者でも安心して食べることができる。
葛と様々な食材から作られた、福々庵(広島県)の「シャリもち葛バー」である。

福々庵 代表取締役 森本真由美氏
福々庵は、おなかが満たされると子どもたちの幸せ度も上がると、地域向けのおやつとして「福」の刻印が押された「福饅頭」の製造販売を始めたことがきっかけで設立された。
学校や高齢者施設からも注文が入るなど人気が高まり工場設立を決意。
饅頭の需要は夏場に落ち着くため、夏向きの商品づくりを模索していたところだった。
代表取締役森本真由美氏は、開発時の様子を次のように振り返る。
「高齢者施設のおやつとしてお饅頭を配達していたときに、『昔食べていたようなアイスキャンディーは作れないの? 固くなく、歯が弱くなっても食べられるもの』と言われたことがきっかけで葛粉を使ったアイスを開発しました。お客様の声にこそヒントがあります」
現在は販売先の要望に沿ったOEM提供、および自社ブランド商品(大手スーパー・自社店舗およびネット販売)を展開している。
会社名 | 株式会社福々庵 |
住所 | 広島県広島市中区南吉島1-1 広島ポートパーク1階 |
代表者 | 代表取締役 森本真由美 |
設立 | 2013年 |
従業員数 | 約15名 |
事業内容 | 和菓子製造販売 |
URL | https://fukufukuan.jp/ |

シャリもち葛バー(ソーダ)の製造現場
商品の評価が高いのに利益が…
新工場をHACCP仕様にして大手企業との取引もできるようになり、マスコミにも取り上げられるなど商品への評価は高まってきた。
ただ、「納品をExcelで管理していただけで経営数値はわからず、原価の概念もあいまいで、頑張っても頑張っても利益が出ない状況」だったという。
販売した商品の取引先別集計や日ごと月ごと数値を簡単に把握したい、1年に1回だけ注文のある顧客でも1年後に前回の内容を把握してすぐに提案したいなど、ITツールの活用で解決できる課題が明確になってきた。
コロナ禍で森本社長が客先の販売現場支援に出向く機会が減り工場にいる時間が増えたため、整理整頓から工場を見直し、気持ちよく仕事ができる環境づくりに関心をむけられたことも背景にあるという。
とはいえ、ITに詳しい社員はいない。
以前から販路拡大や補助金活用等の情報提供、「シャリもち葛バー」の商品開発をはじめ経営アドバイスを受けていた、広島市中小企業支援センターのコーデネータ・姫野三樹氏に相談し、2022年に販売・請求管理「iTone スマート請求」(ディーエスアール社)を導入することとなった。

「iTone スマート請求」の基本機能
1度の入力で請求データまで クラウドの便利さも
売上の登録から請求書の発行、支払管理などを一つのツール内で扱えるので、導入後は作成した見積書は、受注データ、請求データに展開でき事務作業の効率化を図れた。顧客ごとの取引履歴や売上把握も容易だ。
また、インターネットを通じてサービスが提供されるクラウド型のため、森本社長は帰宅してから一人で集中できる環境で請求書発行などの業務を行っている。急な依頼があってもクラウドならすぐ対応できるのもメリットだという。
姫野氏からは以前よりITの活用を進められていたものの、森本社長はパソコンの操作や年齢的な不安があり、躊躇していたという。
壁を感じながらも必要性から活用を決意し、数字の入力から始めたところ「意外にこなせ、便利さを感じた。経営者がデータを見る意味がわかってきた」そうだ。
数字意識が高まり、従業員に還元できる経営へ
ITの導入・活用の結果、当初求めた経営数値の把握や業務効率化を実現。
途中2回ほどカスタマイズを行い、現在は請求書をそのままメールで送れるようカスタマイズの依頼中だという(郵送費や手間の削減)。
使うに連れ「もっとこうしたい」「この機能が付くと業務はもっと改善できる」と発想が湧く好循環が生まれている。
IT以外の業務でも、例えば発送の際に荷のサイズを調整することで配達料を削減するなど、経費削減にも努力を続けている。
「あれをしたい、これをしたいと思いばかりが先にあふれていましたが、それだけでは経営は成り立たないし従業員を幸せにできない。数字意識を持つことができたのは大きかった。結果は、待遇や働きやすさとして皆に還元できるようにしています。皆も前向きに取り組んでくれるのがありがたい」
森本社長は笑顔で、そして自信をもってこのように語った。
今後の事業展開においては、流通・販売事情の知識や培ってきた新商品開発力を活かし、地域や目的、企業カラーを活かす商品企画・開発・販売促進のアドバイスサービスを強化していきたいとのことだ。
<サポーター紹介>
広島市中小企業支援センター
コーディネータ(リーダー)
姫野三樹氏
ITコーディネータ
広島市中小企業支援センターのコーディネータとして地域の企業を支援。丁寧に話を聴き、企業が抱える課題の本質を理解して経営、ITの両面から支援できるのが強み。補助金等にも詳しく、的確な情報提供は相談者からの信頼も厚い。
福々庵の支援においては、葛バーの商品開発にもアドバイスを行い、森本社長がいよいよIT導入を決意した段階では、踏み込んでサポートを行った。
森本社長は、「今は宿題として『冬でも売れるアイス』の開発を助言いただき挑戦中です。ITの活用に関しては苦手なところも気軽に相談できるので安心して進められます」と感想を話している。