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獺祭の社長が語る 競争相手は規制、既成概念

旭酒造株式会社 獺祭

2014年 夏号 2016.03.01


欲しくてもなかなか手に入らない大人気の純米大吟醸酒「獺祭(だっさい)」。「山口県岩国の四番手」だった酒蔵は、どう危機に立ち向かい、ニューヨーク、パリなど海外への進出を果たすまでになったのか。桜井博志社長へのインタビューを2回に分けて紹介する。

旭酒造株式会社 代表取締役社長 桜井 博志氏

旭酒造株式会社 代表取締役社長 桜井 博志氏
著書に『逆境経営』(ダイヤモンド社)

競争相手は規制、そして既成概念

──本社直売所でも「おひとり様1本まで」、飛行機のキャビンアテンダントの方も「欲しいのですが買えません」とおっしゃっていました。「獺祭」の人気は素晴らしいですね。

桜井(文中敬称略) 一人でも多くのお客様に「獺祭」を味わっていただき「ああ、美味しい」という声を聞けるよう生産を強化していますが、現在は原料米の山田錦が不足しており、ご迷惑をおかけしています。

──酒蔵としては珍しい、年間通した製造方式を取られているそうですね。

桜井 急逝した父の後を継いで社長に就任した30年ほど前、旭酒造は山口県岩国4位の「負け組」、さらに焼酎ブームに押されて市場が縮小していました。倒産寸前ですから、何らかの解をひねり出して実行するしかありません。

「冬季に杜氏が造る」という日本酒造りの常識にとらわれず、酒蔵内の温度を一定に保ち、若い社員が年間を通して安定的に製造できる仕組みを考案しました。

──山田錦を用い、精米歩合の低い大吟醸に特化した理由は?

桜井 ここに至るまで、いくつもの失敗がありましたが、東京市場でご評価をいただく中、価格に対する絶対的なおいしさ・満足を追求しようと方針を定めたのです。小さな酒蔵ですから、目新しい商品をいくつも出し話題性で売るのではなく、最高品質を目指そうと。

──蔵見学を受け入れたり、ホームページで製造プロセスを詳しく情報発信しているのは、その自信の表れなのですね。

桜井 お見せできるものがそれしかなかったということです。酒蔵の等身大の姿をお客様にわかっていただこうと「蔵元日記」というメールマガジンを発行しています。ホームページの開設は2000年頃でしたが、売るためのサイトではなく、酒蔵としての情報を発信し、納得していただくことに重点を置きました。

──海外市場でのライバルはワインですか。

桜井 海外市場でみると日本酒はほぼ白紙に近い状態。良いものを提供すれば、ワインとはまた別の新しい市場を拓ける可能性が非常に高いのです。

そうとらえると、競争相手は同業者ではありません。原材料である酒米の生産量を増やしたくても増やせない農政や高い輸出関税に代表される各種「規制」、そして、私たちの中にある常識や慣習といった「既成概念」──これこそが「競争相手」であるといえます。

次回に続く

会社概要

社名 旭酒造株式会社
所在地 山口県岩国市周東町獺越2167-4
事業内容 日本酒「獺祭」製造販売
従業員数 100名
URL http://www.asahishuzo.ne.jp/

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