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ノウハウをタブレットで持ち歩き、営業に有効活用<IT活用事例>

代表取締役社長 松本信之氏

2015年 春号 2016.11.20


多様な食文化が育まれ、食に対する意識が高い加賀百万石の城下町・金沢。江戸時代の文献には、ハレの日には現在の価値換算で10万円レベルの食事を楽しむ市民の様子が記録されているという。
舌の肥えた人々を満足させる料亭・飲食店や旅館が集まる金沢を支える食材卸会社が、金沢の台所・近江町市場に社屋を構える松本である。

社名 株式会社 松本
所在地 石川県金沢市下近江町17
設立 1976年(創業:1958年)
従業員数 10名
事業内容 珍味・総合食品の卸売り、淡水魚養殖・天然魚の販売、インターネットによる通信販売
URL http://matumoto.co.jp/

食材流通の在り方は? 提案力で勝負

株式会社 松本生クチコ、このわた、ツルモ、鴨肉…。普段の食卓ではあまり目にしない「料亭食材」をはじめ、プロの料理人が満足する食材を約1万点扱う。取引先の平均料理単価は1万円以上のレベルだ。二代目社長の松本信之氏は、ビジネスの状況を次のように説明する。
「以前に比べ物流が発達し、誰でも仕入れができるようになりましたので、卸売業も差別化が重要です。お客様に頼まれた食材を納める時代から独自の食材を提案する時代になったと認識しています」
同社からしか仕入れられない生クチコなどはその典型だ。松本社長は幅広い食材、その調理法やメニュー例などの豊富な知識で信頼を獲得し、事業を伸ばしてきた。
この強みは反面、経営課題でもあった。提案営業ができるのは松本社長だけだったからだ。
「商売は人に依存します。商品知識も営業力も。自分だけが知っている知識をどう社員に伝えて人材のレベルを上げるかを考えてきました」と打ち明ける。
旧知であった中小企業診断士・ITコーディネータの遠田幹雄氏の協力も仰ぎながら、社員教育に力を注いできた。社員一人ひとりと面談し年間目標を決め、目標達成のプロセスを通じて力を伸ばしている。
松本社長が蓄積してきた食材提案の知識を共有する点では、とくにITが役立っている。

社内ブログに食材紹介タブレットで顧客に案内

同社では、毎日のように食材の勉強会や営業のロールプレイを行っており、その際の松本社長の説明を担当者が社内用のブログ(Wordpressを利用。パスワードを設定し、社外には非公開)に登録する。食材名、季節、行事などのキーワードを指定して、あとで探しやすいようにした。
例えば、「のどぐろ」のページを開くと、「フライもよいが高級感を出すなら天ぷらです」と解説があり、のどぐろの実物や調理例の写真が出てくる。
昨年からは営業担当者のパソコンをタブレット(Windows)に変更。客先でタブレットからこのサイトを開き、顧客が求める商材をその場で検索し、内容を参照するスタイルにした。食材のことを完璧に覚えていなくとも、一緒に画面を見ながら(読みながら)説明できるのがタブレットならではの利点だ。
拡大縮小が容易なので、調理例の写真を臨場感を持って伝えられる。「いかにお客様とコミュニケーションを図っていくかを考えるうえで、ビジュアルはインパクトが大きい」と松本社長は言う。
入社3年目となる営業担当の堀理恵氏は、「例えば、“春の御膳”という項目をタップすればいろいろな食材や調理例が出てきますので、読みながらお客様とお話しすると納得してくださいます。私自身も仕事が身についてきました」と利用の様子を笑顔で語る。
この方法をアドバイスした遠田氏は、「ブログを書くだけでよいので仕組みは簡単です。大事なのは毎日続けること。蓄積するほど効果が表れてきます」と解説する。
営業担当者の目標設定は、若手社員は顧客へのプレゼンテーションの数、10年選手以上は納品数で行っているそうだ。

タブレットと食材活用データベース(社内ブログ型)を活用して顧客への提案を行っている堀理恵氏。

多彩な食材提案にITは必須 フードプロデュースも強化

Windowsタブレットは、オフィスにいるときはキーボードを接続して事務処理用のパソコンとして活用できる長所がある。今は、社内外の業務を1台でこなせるようになった(社内ではWi︱Fi経由でインターネット接続)。
その他、販売管理システムやグループウェアによる日報の共有などにITを活用。また、全国に食材を通信販売するネットショップも2000年から運営している。
「ITがなかったらビジネスは進みません。絶対必要。そして、社員が働いているときに楽しくなかったら会社は良くなりません。そのために『勉強せえよ』と言っています」と言う松本社長は、人材育成の取り組みに手ごたえを感じている。今後は、商品開発支援などフードプロデュース業にもさらに力を入れていく構えだ。

店舗でも直接食材の購入ができる

店舗でも直接食材の購入ができる

サポーター紹介

遠田幹雄氏遠田幹雄氏
株式会社ドモドモコーポレーション代表取締役
中小企業診断士ITコーディネータ
http://dm2.co.jp/

北陸を中心に活動。地域企業の経営コンサルティングを行う傍らWeb活用をはじめとするIT経営関連セミナーの講師としても活躍。
セミナーやブログ、SNSでは「どもどもの遠田」として「ダジャレを連発し周囲を和ませるプロ」として人気だ。
「年商1億円の会社を10億円にする黒子」をポリシーに、中小規模企業の支援を行っている。
松本へのITや経営に関するサポートは10年以上になる。ネットショップの立ち上げやグループウェア、食材データベースの支援なとその時々のIT課題に対応しつつ同社の成長を支援している。「経営課題は5、6年で変化してきますが、共通するテーマは“人”です」と言う通り、人材育成支援は継続的なテーマである。
松本社長は、「当社の課題を把握したうえで、解決策の相談には適切に応えてもらっています」と感想を話している。


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