机上の生産計画を「計画生産の実施」へ 改革の一歩は機械の稼働状況把握から
2017年 夏号 2017.07.04
宮城県大崎市・製造業 光電子の場合
株主は社員─平成元年(1989年)にコイル製品等のメーカー東光より分社独立した光電子(宮城県大崎市)は、それまでの事業・生産設備を維持しつつも、「自主・自立した工場」を目指している。
言葉に込められた意味を、佐々木秀社長は次のように説明する。「依頼されたものを作るだけの工場では生き残りが難しい。製造ノウハウを蓄積し、コストや利益をきちんと管理し、改善を実行できる会社を目指しています」
会社名 | 光電子株式会社 |
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住所 | 宮城県大崎市岩出山上野目字中川原14-7 |
設立 | 1989年(東光株式会社より分社独立、社員が出資し設立) |
従業員数 | 80名 |
事業内容 | コイルを主体とした電子部品と製品の設計、製造、性能評価等 |
URL | http://www.hikaridenshi.co.jp/ |
生産性を上げるには「チョコ停」対策が必要
生産性を高める取り組みの一つに「工数シェアリング(助け合い)」がある。いつの間にかできてしまった「城」=部門の壁を越え、特定部門に仕事が集中した際に他部門から応援に行ける体制づくりだ。皆で問題解決を進められる意識改革を行っている。
生産現場では、経年した機械が時々止まり修理の間稼働できない点(「チョコ停」)が課題であった。佐々木社長は「生産計画をきちんと実行して計画生産を進めること」を重要視していたが、機械が停止すれば計画は絵に描いた餅となり、生産量が低下してしまう。
そこで設備保全グループマネージャーの坂元真彦氏が中心になり、機械の稼働状況を把握するシステムの構築に挑戦した。
「機械ごとにログは記録されているものの80台分のデータを一つずつ取り出して確認するのは手間のかかる作業でした。まずはリアルタイムに稼働状況を把握し、チョコ停の実態を掴むことから始め、最終的には予防保全に活かせるデータが取れる仕組みを作りたいと考えました」
坂元氏はこのように企画意図を説明する。
設備には手を入れず電気信号を“横取り”
どこの会社ならシステムを作れるのか。NPO法人未来産業創造おおさきのコーディネータからの紹介で2015年12月に出会ったのが、仙台市のITベンダーコー・ワークスであった。
ただ、工場の機械は東光からのレンタルであるため、機械に手を加えることができない。コー・ワークスは、約2か月間の調査・トライアルを実施。機械が停止した時にランプが赤に変わることや、機械を制御するPLCから設備に影響なく電気的な変化のデータを取れることを突きとめ、「既存設備に手を加えずにデータを“横取り”できる」(コー・ワークス)IoTシステムを考案した(下図)。
機械の状態変化をIoT機器から自動的にサーバーに送り蓄積。収集されたデータは整理・グラフ化され、タブレットやパソコンなどのブラウザーでリアルタイムに把握できる。業務分析においては、製造業に対して経験豊富でIoTスペシャリストでもある独立系ITコーディネータの協力も仰いだ。
この仕組みは2016年12月より稼働を開始した。Web技術を使用しているが、セキュリティ対策を考慮し、運用は社内サーバーで行っている。
「チョコ停が起きたらすぐにデータを確認できるようになりました。また、日々の監視に加え、月単位で集計し、機械ごとの特徴や原因分析などを進めています」と坂元氏はシステム稼働後の様子を語る。
「データが見えたことで現場の意識も変わってきています。今はタブレットで見ていますが、工場にモニターを置いて皆で見られる仕組みも考えたい」とのことである。
自主・自立した工場へ 見える化で意識も高まる
タイムリーな稼働把握によるスピーディな故障対応が実現でき、また機械ごとの特性を掴んだうえでの対策がしやすくなった。
佐々木社長はデータをもとに稼働率を上げる対策や老朽化した機械の改良などを進め、ゆくゆくは自動監視を実現して少ない人数で24時間稼働できる工場を目指したいという。
データを得たことによる手ごたえと今後の方向性について、佐々木社長は次のように語った。
「まだ入口ではありますが、IoTを使って見える化が進み始めました。データの共有は仕事の“助け合い”とつながっており、自主・自立への歩みと一致しています。これまで以上に顧客起点で考え、継続経営を進めていきたいと思います」光電子は大きく変わり始めている。その歩みを後押しするツールの1つが、機械稼働把握のIoTシステムなのである。
サポーター紹介
株式会社コー・ワークス http://co-works.co.jp/
機械の稼働状況をリアルタイムでモニタリングするIoTシステムを構築したのが、コー・ワークスである。
同社は、ITコーディネート・ソフトウェア開発・ハードウェア開発・事業プランニング・情報デザインなど枠にとらわれない「様々なモノ・コトづくり」のサポートをポリシーとする。働き方改革分野でも事業活動を推進中。
また淡路社長を筆頭にITコーディネータの資格を持つスタッフが多く、経営や業務を理解してIT活用を推進できることが強みでもある。
光電子のIoTシステム構築では、武田修氏がプロジェクトマネージャーとして構築目的や仕様を理解してプロジェクトを推進。電気設備から信号を読み取りデータ化するための設備仕様確認やハードウェアの開を白田正樹氏、サーバー側のプログラム開発を南部高正氏が担当。チームプレーで2016 年12月にシステムを完成させた。
佐々木社長は、「現場に足を運び実証を重ねて、責任を持って進めていただきました。制約条件が多い中で、100%の対応だと思います」と評している。