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飲食店、勝負の時 ―活きた顧客管理システム、
そして店舗アプリへの挑戦

COMPASS2023春 2023.02.01


ステーキ&ハンバーグの人気店が、コロナ禍に挑戦したこと
新しいIT活用、そして1店舗をテイクアウト専門店に
   ―群馬県高崎市 飲食店 ハッピーアイランド

 
SNSを使った販売促進や、顧客データベースの活用、POSレジによる売上分析など、ITを上手に利用して、ステーキ&ハンバーグ店の経営を伸ばしてきたハッピーアイランド。COMPASS2017年春号に掲載してから6年、コロナ禍にどう挑んだかを取材した。(編集部)

 

 

「ああ、おいしい」―群馬県高崎市のステーキ&ハンバーグ店GGC高崎本店(運営:HAPPY ISLAND 以下ハッピーアイランド)の上州牛ステーキは、なんとも言えない幸福感をもたらした。コロナ禍で飲食店に足を運びにくくなった体験を経て、おいしいものを食べる喜びを再認識した。

ハッピーアイランドは、高崎市・前橋市に5店舗を持つ。コロナ禍では、基本的な対応はもちろんのこと、座席間を拡げたり、仕切りカーテンを設置するなど、感染拡大防止の対策に力を入れた。2020年の春は社会全体に不安が増し、先が見通せない状況であったが、同社を信頼する顧客は「おいしいものを食べに」足を運んでくれた。
「最近は、お昼時間帯をずらしてのご来店でお客様が途切れる時間帯が減ったり、平日の予約増加傾向が見られています」
マーケティングやIT活用を指揮する同社取締役の福島展子氏はこのように話す。ハッピーアイランドでは、肉の目利きや品質・味を追求する福島健司社長と、うまく役割分担がなされている。

 

取締役 福島展子氏(左)
GGCキッチン 店長 福島志緒氏(右)

 

これまでも、POSレジによる販売動向の把握に加え、ポイントカードを利用した顧客データの蓄積とDM送付、SNSの活用を通じた販促策を展開し、来店数を増やしてきた。

コロナ禍においては、顧客データベースの価値を再確認したという。
「DMを楽しみにしてくださっているお客様も多く、コロナ禍になっても、スタッフが手書きで一言添えることは継続しました。最近は「LINE公式アカウント(旧 LINE@)」でも情報を流しており、再来店への策が打てる仕組みを持っていてよかった」と振り返る。

会社名

有限会社HAPPY ISLAND(店名:GGC)

所在地 群馬県高崎市緑町1-28-2
設立 2003年
従業員数 40名
事業内容 飲食業(ステーキ・ハンバーグなど)(群馬県内にレストラン4店舗、テイクアウト店1店舗)
URL

http://happyisland.jp/

 

●タッチパネル式オーダーで利便性高める

この2年間に、IT面ではテイクアウト商品のネット予約を導入したほか、タッチパネル型のオーダーシステムの導入や、自社店舗共通のスマートフォンアプリの提供を進めた。

タッチパネル型のオーダーシステムは、顧客が画面から頼みたい品を選ぶと注文データが厨房に送信される仕組みだ。注文を受ける業務が削減されたため、スタッフは料理の提供や他の業務に時間を使えるようになった。データも、注文の段階から取得できる。
顧客側は、スタッフを呼ばずに手軽にオーダーできるので、追加注文につながりやすい。

 

テーブルに置かれたタッチパネル式のオーダー端末は、写真も豊富で選びやすい。スタッフを呼ばずに頼めるので、追加注文しやすいのも特徴

 

スマートフォンアプリは、混雑時の順番待ちシステムを利用している「E-PARK」から提案を受けた。
決して安い費用ではなかったため悩んでいたが、スタッフから「最近は、アプリから情報を見ることが多い」との意見があり、制作を決意した。LINEの場合、顧客が複数店舗を利用する際、店舗ごとにアカウントを登録する必要があるが、専用アプリの場合はグループ5店舗をまとめ、来店スタンプの発行や各店の予約を行うことができる。

専用アプリの画面イメー(例)

画面を提示することで来店スタンプが電子的に記録される

 

新しい仕組みの導入には不安がつきものだが、「やってみてダメならやめればよいと、思い切ってチャレンジしています」と福島氏。
ポジティブな考え方と挑戦意欲は、同社の強みの一つといえるだろう。

当面はポイントカードと併用し、利用が進めば、アプリに統合する計画とのことだ。

 

●改装でテイクアウト専門店を開店

2021年10月には、一番規模が小さかった店舗を、テイクアウト専門店「GGCキッチン」に改装し、セントラルキッチンスペースを併設した(「事業再構築補助金」を活用)。

テイクアウト品はネット予約のほか、デリバリーサービスにも対応

セントラルキッチンには大型の調理機械を導入。ハンバーグの肉をこねる作業は5倍のスピードアップを実現した。準備ができたハンバーグ等は指定のルートで各店に配送、店舗で焼き、最終調理を行う。また、サラダと一緒に提供するGGCオリジナルのドレッシング類は、セントラルキッチンで卓上用容器に詰め、店舗での負担を軽減、賞味期限管理もわかりやすくした。近い距離内に5店舗が立地する利点を生かし、会社全体での効率化や高い品質の維持を実現したのである。

「GCCキッチン」店舗内のセントラルキッチンでの調理風景

 

GGCキッチンの店長を務めるのは、長女の福島志緒氏である。コロナ禍で思うところあり、両親が育ててきた事業を支える決意をしたそうだ。若い世代の感性を生かし、インスタグラムで情報を発信し来店を増やすなど、新しい試みをしている。

状況をみて素早く動いた2020年からの3年間。

福島氏は次のように振り返りつつ、今後の展望を語った。
「実行への資金に関しては、会員になっている高崎商工会議所からの新型コロナ対応の各種補助金を案内いただき、支援策を使いこなして、やりたかったことを実現できました。飲食業がなくなることはありませんが、価格を抑える方向と、高いサービスを提供する方向に二極化していくのではないでしょうか。お客様の変化を見ながら、サービスを磨いていきたいと思います」

事業環境の変化を捉え、強みを活かしながら新しい挑戦を続ける。ステーキやハンバーグに舌鼓を打つ顧客の笑顔は、こうした日々の取り組みから生まれているのである。

 

 

 


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