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店舗経営ですべきことが見えた ─POSレジ、店舗改装、そして…

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2018年冬号加筆 2017.11.28


よろず支援拠点への相談が転機に
埼玉県浦和市  – 婦人服販売 noi bloom(ノイブルーム)-

旅行の話をしながら新入荷した服を見る顧客は、リラックスした表情。トレンドを聞きながら店舗での時間を楽しんでいるようだ。もし、その顧客にピッタリこないと感じたら、その服は無理に勧めない。
埼玉県さいたま市浦和区にあるレディースファッション・noi bloomの店舗である。

noi bloom店舗

 

代表・星野久美子氏の誠実なアドバイスが信頼を生むnoi bloomは、30代〜50代の女性を主な対象に、オリジナル性と素材の良さを併せ持つファッションアイテムを提供する。百貨店などで売られるメーカーブランドだけでは少し物足りない。自分らしく、ほかの人とかぶらない着心地の良い服を楽しみたいという地元女性のニーズにこたえている。

星野氏のファッションスタイルにあこがれ、コーディネートや着こなしを参考にする顧客も多いという。

1711_P21-B代表 星野久美子氏
会社名 noi bloom(ノイブルーム)
住所 埼玉県さいたま市浦和区仲町2-6-2
事業内容 婦人服販売
URL https://noibloom.com

 

10年近くにわたり地元で支持されてきた同社は、2016年6月、都道府県に一つずつ設置され中小企業の悩みにワンストップで対応する県内の支援機関・「埼玉県よろず支援拠点」を訪れた。

その理由は、「お店を続けたい、という思いだけで経営はできない。問題を発見し、数字から何を読み取り、何をすればよいかを相談したかった」からだったという。

埼玉県よろず支援拠点のコーディネーター  小笠原富美子氏

以前は大手ネットショップモールでのネット販売も行っていたが価格競争が激しくなり縮小してきた。店舗の売上は伸びているが、次の手が必要だったのだ。

相談を受けた埼玉県よろず支援拠点では、商業分野に精通する阿部芳文氏が対応し、店舗運営のアドバイスを行った。その過程で売上管理をEXCELと手作業で行っていることが課題の一つとして明らかになり、改善分析の元となる単品ごとの販売データを効率よく取得するにはPOSレジ導入が不可欠との見立てがなされた。

そこで、この課題にはIT分野にを受け持つ小笠原富美子氏が担当し、店舗改革へのIT活用がスタートした。

 

手作業の単品管理から分析のためのデータへ
大きな山は、商品登録の作業

洋服は、一つのデザインにサイズ・色のバリエーションが枝分かれする商品。売上動向をつかむには、そこまで入り込んだ単品管理が必要である。

同社はきちんとこのレベルでの売上管理を行っていた。ただ、販売実績は顧客を見送った後にノートに記録、閉店後、表計算ソフトEXCELに入力して整理していたため、混雑しているときに漏れがあったり、金額が合わないとすべてを見直さなければならないなど、作業負荷が大きかったのだ。

かつてはPOSレジというとまとまった初期投資をしてメーカーから機械を購入しなければならなかったが、クラウド型のレジサービスが提供され、店舗の設置にピッタリなタブレットが登場したことで一気に身近になった。小笠原氏はこの事情をふまえてタブレットPOSレジの活用を勧め、候補として4社のサービスを提示した。

「小規模店舗にとってPOSは手が届かないものと思っていたので、iPadでレジができると聞き驚きました」と星野氏は当時を振り返る。

機能を比較したり、実際に試してみたり、また初期費用や月額利用料金を調べて、サービスを選定。
「検討時点においてサポートの充実やアパレルに強いレジであること、在庫管理ができること、などから『スマレジ』を選びました」と言う。

比較検討に2か月、「スマレジ」のお試し利用に3週間。3か月ほどで導入に至った。

しかし、新しいレジシステムには、商品コードの登録という大きな作業が控えている。小笠原氏は、導入前の作業負荷や、商品コードの重要性を丁寧に説明した。

「全商品をコード管理して、バーコードを値札に貼っていくのは大変な作業です。だからこそ導入後に売れ筋を分析しやすいよう、アイテム別、メーカー別といったコード管理が重要であり、シミュレーションを重ねながら決めていただきました」と話す。現場を知る専門家ならではの助言で、noi bloomも覚悟を決めて取り組んだ。

新しいソフトの機能を理解するまで、データ移行や登録作業は戸惑いも多かった。さらに、商品についている下げ札に一つずつバーコードを貼っていく作業も慎重さを要したという。

 

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単品管理を実現したクラウド型POSレジ
値札にバーコードシールを貼り、レジではリーダーで読み取る(左)
レジ側の画面イメージ(右)

 

山場を乗り越え、夏にはPOSレジの運用がスタート。店舗デザインになじむiPadを利用。値札のバーコードをリーダーで読み取り、POS管理を行ってる。クラウド上に蓄積される販売データ・集計データは、自宅のパソコンなどからも閲覧が可能だ。

同社は店頭でかき氷を販売しているため、POSレジサービス導入に軽減税率対策補助金を利用することができた。

 

販売した際のレジ画面例。画面は大きく見やすい。
iPadを用いたレジは、店舗デザインになじみがよくカウンター周りもすっきりする(キャッシュドロワー等はカウンターの中に収納)

クラウド型POSレジサービスのメリットの一つは、IDとパスワード管理をしっかり行えば、インターネットに接続できるどこでもデータ把握ができること。
 パソコンから、リアルタイム売上、日別売上、商品別売り上げなどを確認できる画面の例

 

さらに、売上データをポイントカードを発行している顧客リストと連動させ、顧客別の購買履歴が把握できるシステムとした。

POS事例導入後の変化について星野氏は次のように感想を話す。

 「毎月の締めの作業に時間がかからなくなりました。そして、お客様が何をいくら買ってくださったか一覧で出るのは素晴らしい。会員の方を購買内容によって三つに分け、DMやイベントのご案内を出しています」

一人ひとりの顧客を大事にしてきた同社は、データ分析によりさらなるサービス・販売強化が図れるようになった。

そして売れ筋商品を把握して切らさないこと、“顧客が望むものをきちんと売っていける”店舗経営へと歩み出した。

 

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(2017年11月現在)

 

その後、POSレジを会計クラウドサービス(「Freee」)とデータ連携し、販売実績データを会計システムに取り込めるようにして効率化を図った。仕訳に問題がなければ再度の入力が不要になり、記帳にかかる時間を最小限にすることができる。  

 

noi bloomが提案するファッションを
いつでもどこでも買えるECサイトへ

店舗経営における基本体制が整った2017年春にはIT以外の取り組みとして店舗改装を行い(この際も、埼玉よろず支援拠点のコーディネーター2名がサポート)、夏からはもう一つの課題であったWebサイトの活用に本腰を入れた。noi bloomが提案するファッションに触れてもらう機会を増やし、また自社サイトにおける販売を広げて、店舗とネットの両方の売上を伸ばしていくためだ。

以前のネット販売では、価格競争に陥ると大規模な会社が有利になることを実感。noi bloomらしさ、提供価値を伝えるサイトが必要だったのだ。

小笠原氏はWebサイトのコンセプトづくり、制作会社選定のアドバイスを行い、目的に沿ったサイトづくりを支援した。

「ターゲット層はだれか、noi bloomらしさをどう打ち出すか、そしてユーザビリティの向上で購入しやすくすることなどを明確化してきました」

出来上がったWebサイトを見ると、「ランチ会」「カラー別」などのコーディネート提案が全面に出され、気に入ればスムーズに購入へ移行できるつくりになっている。

リニューアルしたnoi bloomのサイト(例) コーディネート例をわかりやすく紹介し、欲しい商品を買いやすい動線とした

 

新サイトは2017年10月より本稼働。まだ間もないが、ページビューは伸びており、じっくりコンテンツを見てくれるユーザーも多いという。今後は、さらに検索キーワード対応を強化していくとのことである。

「SNSをご覧になって電車に乗って浦和まできてくださったお客様もあり、ネットの力を感じています。遠方で来られないというお客様のためにもオンラインも充実させ、今までのお客様を大切にしながら多くの方にnoi bloomを知っていただけるようにしていきます」と星野氏は目を輝かせた。
  

「相談」の一歩を踏み出したことから、経営に必要なことや課題が浮き彫りになり、やるべきことが見えてきたnoi bloomは、その一つひとつを、着実に実行している。

 

サポーター紹介

埼玉県よろず支援拠点 Webサイト: http://www.saitama-j.or.jp/kikaku/yorozu/

 

小笠原富美子氏
(中小企業診断士、ITコーディネータ)

埼玉県よろず支援拠点にて、IT分野を中心にコーディネーターとして活躍している小笠原氏は、よろず支援拠点における3年間の相談件数がのべ1200を超える活躍をしている。

ITに限らず多くの企業が抱える販路開拓や集客に総合的に対応できる専門家。noi bloomでの取材中も、店舗前を通る人々の反応をチェックしチラシの設置など販促のアドバイスを送っていた。

ホームページ構築の際は「作る」前に「ストーリー作り」―コンセプトの整理やチラシに伝えたいことをまとめるなどを大切にし、本当に必要なプロセスを踏んだ支援を行っている。支援の確かさが口コミで広がり、地域の女性起業家の間では「小笠原参り」(埼玉県よろず支援拠点に行って小笠原氏の支援を受けること)という言葉が交わされているという。
noi bloomでは、「今できる最大限のことをしたいとご相談し、たくさんのことを教えていただきました。補助金があることも知らず、お金をかけずにここまでの仕組みができるとは驚きました。多くの方に支持される店になるよう、取り組みを進めていきます」と話している。

 


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