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震災、市場変化…危機に直面して得た「気づき」 とは

2018年 春号 2018.04.19


ITは即効性より積み重ね
 ― 十一屋ボルト(宮城県)金物卸売業 ―

本棚を埋め尽くす書籍。SEO対策やWebなどITやマーケティングの本も並ぶ。

「チェックしているんですよ」とWebのアクセス解析画面を見せてくれたのは宮城県・十一屋ボルトの佐藤兼紹会長である。リーマンショック、東日本大震災、ネット事情や競争環境の変化に直面しながらも、その都度、立ち向かってきた。

代表取締役会長 佐藤兼紹氏

代表取締役会長 佐藤兼紹氏

同社はボルト・ネジ、作業工具を、主に企業向けに販売。取扱品数は1万点に及ぶ。仙台市に本社および販売店舗、八戸に営業所を展開。石巻にあった営業所は東日本大震災で津波の被害を受け本社に統合した。

本社1階にて、豊富な品ぞろえの店舗も展開している 宮城県仙台市の社屋

 

会社概要 株式会社 十一屋ボルト
住所 宮城県仙台市宮城野区扇町7-1-17
代表取締役 小野 勝氏
設立 1956年
従業員数 12名
事業内容 金物卸売業
URL http://www.juuichiya.jp/

 

ネットで取引先を開拓 事務処理の課題をITで

インターネットの普及を受け、2005年にWebサイトを開設。同業内でいち早く取り組んだこともあり、アクセスは上々だった。途中改定し、アクセス解析やSEO対策も行ったところ、キーワード「ボルト」で検索するとトップページに表示されるまでになった。

引き合いが増え、サイトを通じて新しい分野の大手企業との取引も開拓できた。

しかし、 ここで一つの壁にぶつかった。多品種少量受注への対応である。

「取引先からは、用途や時期に応じた少量の見積依頼と発注が頻繁にあります。FAXは月に4000枚に及び、担当者がやってもやっても追いつかない。ミスが増え、ついに半年間納入停止になったのです」
佐藤会長は当時を述懐する。

「このままでは他社からも仕事を受けにくい」とIT化を決意。ITコーディネータ清野浩司氏のアドバイスも受け、商品単価表から自動的に見積書が作成できるシステムを構築した。受注後の処理には、注文書のバーコードを利用した売上・粗利管理システムおよび、仕入管理システムを用いて対応した。

圧倒的な効率化で、当初の3倍以上の見積処理に対応しつつミスの発生率を限りなくゼロに近づけることに成功。取引先の信頼性を回復し、高い評価を得た。ただ、結果を得られたのはITの力だけではない、と佐藤会長は打ち明ける。「ITと同時に社内体制の組み替えも大切です。当社では在庫商品の置き場所(配列)を受注頻度をもとに並べ替え、働きやすいラインに変えました」

 

震災、そして環境激変 事業戦略を練り直す

Webと受発注システムが整い、これからという矢先、同社にはリーマンショック、東日本大震災、ネットや競合の変化と、外部環境の大変化が次々と押し寄せた。ついには「会社存亡の危機に陥った」。

震災直後は無我夢中だったというが、「津波で石巻営業所が物理的な被害を受けたり、ネットの競合が増えて2000件以上あったサイトへのアクセスがわずか300件に。県内には、復興需要からDIYの大型店舗が進出してきたのです」と佐藤会長は説明する。

十一屋ボルトはここで踏ん張り、事業戦略を練り直した。

具体的には、WebサイトをBtoB向けにリニューアル。宮城県よろず支援拠点の支援も受けながら、顧客に役立つ仕組みを提供し、企業価値を高める方針を立てたのである。

 

 

ヒントは店舗にあった 顧客目線で情報を発信

「顧客の役に立つ」とはどういうことなのか。

ヒントをくれたのは、店舗で顧客と接している社員だった。

「ボルトはネジ部分の直径で規格化されていますが、工具を挟む頭の部分を測って探すお客様がいると聞き、大きな気づきを得ました」(佐藤会長)。

売り手視点で規格や単価を示して終わり、ではなく、ボルトを探す人が困っていることに着目。サイトには「ボルト相談所」コーナーを設けたり、顧客が迷いそうな観点でボルトの種類を説明するなど、「この会社ならボルトのことを相談できる」と感じられるコンテンツを掲載した。

 

※現在のWebサイト内の「ボルト相談所」ページ。ボルトの規格だけでなく、顧客が検索する言葉で探せるよう工夫した。

 

サイトアクセスは月に1万件レベルに上がり、サイト経由の売上は4倍・全体の2割を占めるまでに上昇。ボルトの二面幅や強度など、プロとわかる人たちからの検索が急増しているのが特徴という。

さらに店舗や人による営業との組み合わせでブランド価値を高める計画だ。

IT基盤の整備は働く人のモチベーションも高める。事務分野では時短で働く女性が安定的に勤務し、ホームページを見て同社に好感を抱いて求人に応募する女性も出てくるなど、人材面での効果も出ている。

「ITは即効性を求めるより、積み重ねが大事ですね」と振り返る佐藤会長に、危機に直面した時の心境を問うと、次のような言葉が返ってきた。

「人は弱いもので、決断を先送りにしがちです。しかし外部環境の変化で本当に追い詰められたときには、皆で必死に知恵を出し、改革の決断ができるものです」

屈せず立ち向かう力は、経営の力である。

※十一屋ボルトは、「攻めのIT経営中小企業百選2017」に選定されました。


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