支援機関の活動紹介:気仙沼商工会議所(宮城県)
2015年 夏号 2015.08.27
遠洋漁業の拠点である気仙沼市は魚の宝庫。フカヒレ、サンマ、カツオ、メカジキ…。ここでなければ食べられない新鮮な魚介類は観光の目玉の一つである。
気仙沼市は、東日本大震災で甚大な被害を受けた。観光の中心地である内湾地区は、まだ整地の途中であるが、被災から4年、飲食店やホテル、店舗などが徐々に再建されている。
そこで、国内外の観光客にタイムリーな観光情報を提供すべく、開設されたのがWeb版観光ガイド「気仙沼観光ナビ」である。
パソコンはもちろん、スマートフォン・タブレットから飲食店や観光施設の情報を閲覧できる。モバイルではGPS機能を利用して、近くにある店を探すことも可能だ。
本プロジェクトの事務局である気仙沼商工会議所のIT支援担当・佐藤淳一係長は、次のように説明する。
「仮設店舗や新しい場所で営業されている企業も多く、震災前の情報を利用できないケースが多々あります。しかし、ネットなら最新情報を届けられる。アンドロイド端末ではナビアプリによるルート案内も可能です」
さらに、英語、中国語、韓国語、インドネシア語に対応。外国人観光客のみならず、遠洋漁業の漁師に多いインドネシア人の利便性も考慮した。
同サイトは、企業グループの復興支援補助制度「グループ補助金」(「中小企業等グループ施設等復旧整備補助金」)を活用して構築。観光産業グループを形成した85社が、まず自社の再建を行い、次のステップとして情報発信に取り組んだものだ。
気仙沼商工会議所・観光サービス部会会長であり、グループ事業のリーダーでもある鈴木淳平氏は、「多くの方に気仙沼に来ていただくには情報発信がきわめて大切です。今後は会議所の会員企業や観光協会の会員企業にも呼びかけて掲載情報を増やしていく予定です」と説明する。
気仙沼商工会議所では、会員企業の約8割が被災した(会議所の建物も浸水の被害に遭っている)。会議所職員だけでは、支援の手が回らない状況だったが、「できること」を考え抜いた。
「再建への意欲を持つ方々に補助金を探して紹介したり、観光ナビのように専門的な知識が求められるプロジェクトは中小機構東北から専門家の方を派遣していただくなど連携も進めました」
業務振興課の吉田哲也課長は振り返る。「グループ補助金」では4グループ・合計700の事業所が補助金を受けることができた。
「迷っていたけどアドバイスを受けて気持ちを決めた」人もいれば、高齢で後継者がおらず断念する人もいた。会社の事情はそれぞれだ。その一方で若い世代が気仙沼に戻ってきたり、ボランティア活動がきっかけで気仙沼に移り住む人もいるなど、新しい風も吹いている。
「企業の再建が進めば、次は販路開拓などIT活用の支援も必要になるでしょう」と佐藤氏は話す。支援の内容も復興のステージに合わせて変わっていく。
吉田氏は最後に「企業規模によって差別することなく、一社一社きちんと話を聞いて支援を続けていきます」と力強く抱負を語った。
記事中の団体・サービス紹介
- 気仙沼観光ナビ(http://kesennuma-navi.jp/)
- 気仙沼商工会議所(http://www.kesennuma.or.jp)