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ストレスチェックと企業の経営

ビジネス イメージ

2015年 秋号 2015.12.14


2015年12月からスタートした「法に基づくストレスチェック」は、事業場50名以上の企業にとっては「新たに増える仕事」です。 しかし、「義務だから実施する」にとどまらず、いかに企業経営にプラスの影響をもたらすかに着目してほしいものです。

では、その意義はどこにあるのでしょうか。

厚生労働省のメンタルヘルスポータルサイト「こころの耳」を運営し、『日本で一番やさしい職場のストレスチェック制度の 参考書』の著者でもある、石見忠士氏は、当制度の本当の意義を、「一次予防による快適な職場環境づくり」による経営効果の向上にあると指摘します。

ストレスチェック特集 第3回として、以下のインタビューをCOMPASS 2015年秋号より掲載します。(編集部)

厚生労働省「こころの耳」ポータルサイト運営事務局 事務局長 石見忠士氏 とその著書『日本で一番やさしい職場のストレスチェック制度の参考書』(労働調査会刊)

(左)厚生労働省「こころの耳」ポータルサイト運営事務局
事務局長 石見忠士氏
(右)『日本で一番やさしい職場のストレスチェック制度の参考書』
(労働調査会刊)

法に基づくストレスチェック制度 導入意図と企業側の対応

まず、制度の概要を説明しましょう。労働安全衛生法第66条の10により、従業員50人以上の「事業場」(総社員数ではなく、その事業場で働く人数)では、毎年1回、労働者へのストレスチェック制度の実施が事業者の義務となります。社内に衛生委員会を設置し、方針を定めます。

  • ストレスチェック検査の実施者
    ストレスチェックの検査を行うのは医師・保健師などの「実施者」です。
  • 結果の通知とその後の対策
    結果は、事業者を通じることなく実施者から本人へ直接通知されます。事業者は本人の同意なく検査結果の通知を受けることはありません。

検査の結果、高ストレスであった労働者が、実施者より「医師による面接指導が必要」と評価され、その旨を労働者が事業者に申し出た場合、事業者は医師による面接指導を実施する義務があります。

また、検査結果は、匿名性を保持した上で集計し、今後の職場環境改善計画に活用することが望まれます。

導入目的は一次予防

本制度はうつ病等の労働者を「見つけ出すためのもの」と誤解されることがありますが、目的はメンタルヘルス不調を未然に防止すること、つまり一次予防にあります。

精神障害等の労災請求件数は年々増加傾向にあります。出社していても仕事に集中できない、長期休養する、といった社員が増えれば会社側も打撃を受けます。経営上においても、大切なチェックといえましょう。

総合的な対策の一環として

当制度は安全衛生管理や総合的なメンタルヘルス対策の一環に位置付けられます。

したがって、すでに労働安全衛生法で規定されている、

  1. 産業医・衛生管理者の選任、衛生委員会の設置
  2. 一般定期健康診断の実施
  3. 長時間労働者への医師による面接指導の実施

の3点を実施していれば運用はそれほど難しくありません。ただ、ストレスチェック制度では、診断結果が不正に利用されて労働者が人事上、不利益を被らないよう、個人情報の適切な管理を行ってください。

日常的な相談対応が大切

一次予防や職場環境改善の成果を上げるには、日常的な産業保健活動の中での相談対応が大切です。ストレスチェックの実施計画策定への参加や、集団分析結果に基づく職場環境改善提案を行える産業カウンセラー等実施者以外の専門職の役割も重要になってきます。

「義務だから形だけ実施する」「社外の業者に丸投げすればよい」とならず、これを機会にカウンセリングマインドに満ちた快適な職場環境を創り出してほしいと思います。

働く人のメンタルサポートサイト「こころの耳」(厚生労働省事業)では、実施にあたっての規程例を公開していますので、参考にしていただければと思います。(談)

※取材協力:一般社団法人産業カウンセラー協会 北関東支部

次回は、ストレスチェックとITの活用について解説します。(更新予定は12月24日です)