第4回 独創性を発揮するために
2020.06.17
今年から、秋田県内の事業者支援として「0(ゼロ)円店舗改善」を進めている。これは先進的な店舗への改善支援を無料で行うというスキームであり、商工会等県内の支援機関において専門家派遣事業で進められている。支援成果を地域内で見える化させることを目的とした地域活性化策である。
独自の面白さを活かす
地方では商店街の疲弊が進み、個店の競争力が低下しているが、顧客離れの要因は実はその店舗そのものにあるという仮説に基づいている。
「0(ゼロ)円店舗改善」は、無料であるために、あくまで既存の設備や什器を活用して、商品構成や品揃えの革新、レジ位置変更、通路や空間スペース拡大などを行うと同時に、無駄な什器の排除、店内整理、不要な在庫削減など店舗全体の改革と再活性化を目指している。
効果はすぐ現れ、事業者の改革意識とモチベーションが大きく向上する。
地方では、薬局が調剤のほか健康食品、化粧品や服、アクセサリー、エステサロン、ヨガスタジオ等を展開するなど、地域事情に応じて多様化しており、面白い店を生み出している。
小売業は品揃えやサービスの差別化がしやすいので、独自性を尊重し、顧客から見て買いやすい空間を創り出せば、蘇っていくと実感した。
地方に必要なのは、都市部の模倣ではなく独創性である。
「一村一品」を生み出せるか
中国では都市から地方へ経済成長を転換させる「一村一品」が進められている。一村とはローカル都市のこと、一品は世界に通用するグローバルな生産品のことである。
日本では地域内で相互経済を補完しながら「ムラ」を完結させる考えが根付いているが、グローバルに通用する独創性が欲しい。そして、地域を支え、海外に出ていくこともできる強い産業構造の確立には、「ムラ」で完結せず、広域な規模拡大が必要である。
地方行政関係者の奮起を
行政や支援機関、事業者と関わる仕事をしていると、独創性の発揮には、地方行政の果たす役割がとても重要であると思う。
国の政策では、事業承継、生産性向上など、政策に紐づいた施策が実施される。
地域展開においては、これをそのまま伝える、概念的な啓発ではなく、どうやって事業承継させ、何のために生産性を向上させるのか、地域ごとに明確化する必要がある。地方行政関係者こそが、独創性を加味した革新を支援できるのだ。
その土地ならではの面白さはたくさんある。都市部の真似からは卒業し、自らの価値観に基づく新しいあり方を目指すべきではないか。
そのために自分も独創的な視点とアイデアを持ち込み続けたい。
四回にわたる連載、ありがとうございました。
(執筆:加藤剛 寄稿内容は2020年春号発行時期時点のもの)
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