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顧客の声は宝物 接骨院向けビジネスでOne to Oneマーケティング<IT活用事例>

2017年 夏号 2017.06.17


顧客との接点を商品開発・提案にどう活かす?
ネットでも電話でも一対一のおもてなし対応を

 

代表取締役社長 松尾 正男氏ウエルネス(Wellness)─この言葉がピッタリくる健康感あふれる明るい建物には、ジムや新鮮野菜が食べられるレストランも備える。医療用品を企画製造販売するダイヤ工業(岡山県)のオフィスである。
 全国3万軒の接骨院を通じて骨盤用コルセット「バリアツイスト」など独自開発した健康サポート商品を販売しているが1963年の創業時、同社は「イ草のスリッパ」を製造していたという。「経営は継続するのが一番大切です。事業にはサイクルがありますから、積極進取の精神で変化を続けています」
2代目社長の松尾正男氏は経営方針をこのように話す。

 

接骨院の先生が勧めたくなる 付加価値の高い商品づくり

 販売ルートは、試行錯誤の末、医療保険適用で薬価が低価格化している病院より、自由診療で独自の特徴を出せる接骨院との直接取引を選んだ。「患者に勧めたくなる商品」を提供し、ともに成長していくとの考え方だ。
 それゆえ、ダイヤ工業では接骨院の先生方の声を何よりも大切にする。「お客様であり、モノづくりのヒントを教えていただくパート
ナー。生の声は宝物です」と松尾社長は話す。IT活用の出発点もここにあった。
 コールセンターに電話が入った際、誰が電話に出ても、どの接骨院の先生かがわかり、「前回と同じものを」と言われたときに適切な
対応ができるよう、CTIシステム(電話番号とコンピュータのデータが連携する仕組み)を他社に先駆けて2000年に導入した。そしてインターネット時代を迎えてWebショップも開設した。
 この「One to Oneのおもてなし」に顧客は驚嘆し、リピートが増加。ニーズにフィットする商品づくりを積み重ね、売上は順調に伸びていった。
 システム導入当時、ダイヤ工業の従業員は34名だったが、数千万円のIT投資を敢行した。
 「バリバリの営業マンがいたら踏み切らなかったでしょう。当時、売上が下がり苦戦していたからこそです」と松尾社長は振り返る。

2回の失敗を経て システムの内製化を決意

 その後、物流のIT化・アウトソーシング、通販システムと生産管理システムの連携と、大きなシステム改変を2回行ったが、残念ながら期待通りのものにならなかった。
 そこでIT推進担当者を置き、システム設計を内製する体制に変更。まったく新しいコンセプトでシステムを刷新した。
 IT推進室の北口政浩氏は次のように説明する。
 「第二次、第三次のシステムは、今の困りごとに対応する機能は実装されたものの、望んだ姿とかい離がありました。私もかつてITベンダーに勤務していて、もっと経営の深いところに入り込んで中長期的に事業を伸ばせるシステムを作りたいと思っていたので、良いチャンスをいただきました」
 第四次システムが目指したのは、まずWebショップとCTIを連携させ、顧客の動向を総合的に分析し営業支援できることだ。
 「販売履歴に応じたグループ分けで提案内容を決め、営業サブシステムに登録します。電話がかかってくればオペレータが見る画面に、Webならマイページでログインした後に、お勧め商品が表示されるようにしました」と北口氏。
 ネットでも電話でも、シームレスにOne to Oneの対応ができる通販システムはまだ少ないが、同社はこれを内製で実現した。
 さらに、アウトソーシングしていた物流を自社運用とし、物流システムも構築した(パッケージソフトを活用)。注文を受け出荷指示をすると物流倉庫にデータが送られピッキングリストが出る。そのリストをハンディターミナルで読み込むと、倉庫内での最適ななピッキングルートが表示される。複数の出荷分をまとめられるのでピッキングのスピードもアップ。効率化と正確さを同時に実現し、ミスはほとんどなくなった。
 システム導入後、売上は25%アップ。生産性の向上に伴い将来を見据えて従業員を採用し、現在は113名となっている。ダイヤ工業 「継続への積極進取」のIT活用

IT 推進室  Vice Chief Engineer  北口 政浩氏 (ITコーディネータ)

 第四次のIT化は北口氏をリーダーとして、社内でシステムデザインを行った。業務の中身をよく理解したうえでシステム化を進めたため、ダイヤ工業の課題解決にピッタリあったシステムを実現できた。
 実は、北口氏は第一次システムの構築を依頼されたITベンダーの担当者だった。第三次システムに苦戦していた時、松尾社長との再会で入社し、自らも「やりたいと思っていた」経営戦略に沿ったIT化の推進者となった。

 

 

システムにも商品にもAIの活用を検討中

 そして北口氏は、今、AIの導入を検討中だと打ち明ける。
 「コールセンターの会話をAIが聞き購買履歴と合わせて最適な提案をオペレータに提示できる仕組みを作りたい。お客様が何を求めているか、人とAIの双方が推測できるのが理想です」
 さらに同社は、商品開発においても、新しいITを取り入れ始めている。
 AIを使って熟練職人の体の使い方を覚えさせ、着るとその動きができるパワースーツなど、発想はとどまるところを知らない。
 「イ草のスリッパを作っていた会社がAIと言う時代になりました。常に前に進み、社会から支持され続け、若い人が入社したくなる企業でありたい」
 松尾社長は静かにこう語った。
 社会や顧客のニーズを先取りし革新的な商品をつくり出し続ける、そして、壁にぶつかったときほど挑戦する。ダイヤ工業の取り組みから、会社の継続に大切なことが見えてくる。


新製品開発への取り組み

「人工筋肉」のように、傷害を持つ方が自力で動作ができるアシスト製品のうち、筋肉の少しの動きに「意志」を感じとり、ものをつかむ作業用義手「PAG」(写真左)、空気圧人工筋肉で握力を支援する「Finch」(下)

 

 

 

 

 

会社概要

ダイヤ工業株式会社
●住所:岡山県岡山市南区古新田1125

●設立: 1963年
●従業員数:113名
●事業内容:医療用品の開発及び製造・販売
●URL:http://www.hikaridenshi.co.jp/

 


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