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ワンストップで課題解決!よろず支援拠点の活動紹介―鹿児島

2017年 夏号 2017.06.22


「伝え方の支援」で早期の成果
センターの一次相談窓口としても機能

売上拡大、経営改善など、経営上の相談に幅広く対応すべく各都道府県に設置されているよろず支援拠点。
設置機関の従来からの支援メニューと連携を図り支援力を高めている例として、鹿児島県よろず支援拠点・かごしま産業支援センターの活動をレポートする。

店舗ディスプレイの改良などもカバー

鹿児島よろず支援拠点は、加藤剛氏をチーフコーディネーターに9名のコーディネーターが活躍。ITはもちろん、デザイン面や店舗ディスプレイの改善など、幅広い観点からの支援が特徴だ。鹿児島県は総面積が広く離島もあるので、サテライト窓口での相談も行っている。加藤剛氏は支援の実際を次のように説明する。
鹿児島県よろず支援拠点「小売やサービス業など、支援の手が届きにくかった業種や、金融機関からの紹介による相談も増えています。また、各地域の支援機関ではカバーしにくい“難しい案件”に対応するのがよろず支援拠点の役割でもあります」

心がけているのは、「最初の成果を早く出す」こと。店舗を持つ企業の場合は、コンセプトを整理し、陳列方法を変えることで売上が上昇するという。
 加藤氏は、「店舗もホームページでの情報発信も、伝え方の変化、つまりコミュニケーション方法の改善がポイントです」と指摘する。
 
最近では、女性の起業を支援する機会も増えている(下記の支援事例参照)。
IT関連の案件は、ITコーディネータの資格を持つ向江隆行氏が担当。Web制作やSEO対策、SNSなどネット活用支援のほか、システム開発やITツール導入支援も行っている。

●よろず支援拠点の設置機関―かごしま産業支援センター
よろず支援拠点の設置機関であるかごしま産業支援センターでは、事業創出、地域資源活用、マーケティングや情報活用などの支援を展開している。
かごしま産業支援センター 情報化支援の一環として情報会員制度を設けており、会員向けのホームページ作成費用を助成する事業(リニューアル、モバイル対応、ECサイト構築など)やITの「出前講座」は好評で、会員数も増加しているとのことだ。
 また、内閣府が実施するプロフェッショナル人材戦略拠点もあり、プロフェッショナル人材のマッチングにより、人材不足への対応や事業承継などをサポートしている。
 センターの支援メニューとよろず支援拠点の役割を活かしながら、幅広い業種を対象に「よろず支援拠点が一次相談窓口となり、各部門が相談・連携しながら支援を進めている」(かごしま産業支援センター)のが鹿児島の特徴といえる。

 

鹿児島県よろず支援拠点 支援事例

<支援事例①>
「開業してよかった」集客の壁を乗り越える マタニティ整体 Happiness http://yasuhagi527.wixsite.com/happiness

マタニティ整体 薩摩川内店 Happiness 代表 萩原康代氏「知ってもらうにはどうしたらよいだろう」
 産前産後に体にかかる負担を和らげる「マタニティ整体」Happiness を薩摩川内市の自宅で開業した萩原康代氏は、看護師から転身。育児の不安があっても相談できる相手がいない女性たちに、自身の子育て経験を踏まえたアドバイスができることにもやりがいを感じている。
 ただ、ブログやFacebookで情報発信をしていたものの、「友達までしか広がらない」。チラシのポスティングも手ごたえを得られなかった。友人や商工会議所に悩みを話し紹介されたのが、鹿児島県よろず支援拠点(週1回、薩摩川内市でサテライト相談所を開設)だった。
 「『困っていることはなんですか』といろいろ聞いてくださり、自分にはない発想もいただきました。IT には疎かったですが、デザイナーやプログラマーがいらっしゃると聞きホームページをお願いしようと思いました」(萩原氏)
産前産後整体サロン-ハピネス-
 ブログやFacbook の情報基盤となるホームページづくりをよろず支援拠点の支援で進めることとなった。担当コーディネーターの向江隆行氏は、「伝えたいことをたくさん書きたくなりがちですが、女性専用、産前産後など伝えるべきポイントを絞って整理し、基本デザインを提案しました」と説明する。
 顧客の声などの更新は萩原氏自身が行えるようにし、2016年の年末から運用がスタート。顧客は徐々に増えており、「以前は電話で様子を聞く方が多かったのに比べ、今はWeb をご覧になってから予約の電話をくださる方が増え、手ごたえを感じています。よろず支援拠点のことはもっとたくさんの人に知ってほしい」(萩原氏)とのことだ。
 母親が自分の夢に向かって進む姿を3人の子どもたちに見せていきたいと笑顔で語った。

 

<支援事例②>
自分らしい特色のある店舗づくりに踏み出せた Aroma Luna https://coubic.com/aromaluna

Aroma Luna オーナーセラピスト 有村真由美氏「セラピーの仕事に目覚めて店舗を構え、商品をそろえました。そのあと、お店を出しただけではいけないと気づいて…」
 穏やかに話す鹿児島市Aroma Luna(アロマ・ルナ)のオーナー有村真由美氏は、「直感的に起業した」という。
 セラピストとしてマッサージやカウンセリングを行い、アロマ商品を販売する店舗には、幅広い年齢の女性が足を運ぶ。
 2015 年夏の開業後、どう店舗づくりをしていくか迷っていたときに、友人から鹿児島県よろず支援拠点を紹介された。「無料で相談にのってくれるなんて大丈夫?」と疑心暗鬼な有村氏を、友人は自身の相談の際に同席させてくれたそうだ。相談の様子を見て納得し、アドバイスを受けに通うことにした。
 主なテーマは店のコンセプトづくりと売り出し方。事業への思いを話すと、真剣に耳を傾けてくれた。その過程で、「一般にはこうすべき」と思い込んで、内にしまっていたことを、際立つ特徴として表に出すようアドバイスされ、視界が開けたという。
 「月の満ち欠けのサイクルに沿った商品の提供やカウンセリングに興味がありました。ただ、いきなり言ったらなにか怪しまれるのではないかと躊躇していました。そこを『月の満ち欠けのAromaLunaです』と打ち出していいと背中を押してくださり、踏み切ることができました。普通のビジネス相談とは違うアドバイスだと感じました」
 有村氏は店舗コンセプトが固まった時のことをこう振り返る。
 店舗にはプラネタリウム機があり、星を見ながらマッサージやカウンセリングが受けられる。生き方に悩みを抱える女性は増えており、最近では占いの要素を含んだカウンセリングも人気だという。女性たちが癒される空間・時間は今後さらに求められるに違いない。
 「支援に満足しています」という有村氏は、現在はコンセプトをしっかり伝えられるホームページ作りに取り掛かっている。