インバウンド対応にはクレジットカード決済 さらに「かざす決済」の心配り
接客力強化来店客増宿泊業21から100人Web&SNSキャッシュレス決済
2020年冬号 2019.11.30
海外顧客の利便性向上で人口減に手を打つ
―群馬県・草津温泉 望雲
日本三名泉の一つである群馬県の草津温泉。湯畑から坂を上った一角に堂々としたたたずまいを見せるのが温泉旅館・望雲である。黒岩裕喜男社長は15代目と、長い歴史を持つ。敷地の広さに比して部屋数は42室と抑え気味。3つの温泉浴場を広々と利用できるのも特徴だ。
チェックインの時間となり、まず到着したのは香港からの顧客だった。
「町の統計では、宿泊者のうち海外からの方は5%ですが、当館は19%と比較的高くなっています。冬場には特に東南アジアのお客さまが多く、毎年お泊りくださるリピーターの方もいらっしゃいます」と黒岩社長は説明する。
草津町は人口6500人ながら、は年間340万人の観光客が訪れるのだ。近隣からも働き手を集め、インバウンド対策には地域一丸となって取り組んでいる。海外へのPRには大手旅行代理店やネットエージェントとの連携が欠かせない。同時に、自社Webサイトの情報発信や予約機能を充実させ、自社サイトから直接予約する顧客の増加にも力を入れている。
宿泊施設では、国内顧客はもちろんのこと、インバウンド対策としてクレジットカード決済の導入は必要不可欠だ。
望雲では、以前からJTBが提供する「C→REX」にて、キャッシュレス決済を導入。当サービスはクレジットカードの非接触型IC「かざす決済」や自国通貨決済にも対応しており、おもてなし度が高い。
「かざす決済」の利用はまだ月に数件程度だが、「本当に使えるの?」と驚かれるケースもあるそうだ。日本では無理と思っていた非接触型IC決済ができるとなれば、「自分たちを歓迎してくれている」という思いも強くなるだろう。
黒岩社長は、「自分が海外旅行にいけばほとんどカード支払い。両替には手間も手数料もかかりますから。海外のお客様の求めに応じて利便性を向上させるのは当然のことです」と言い切る。
そして、「町内の観光産業におけるキャッシュレス対応は7割程度。C→REXが使えない飲食店や土産物店では決済手数料の高さがネックになっています。今回のキャッシュレス・消費者還元事業で40社ほど新規導入できましたが、商工会議所などが窓口となり手数料を下げられないか働きかけもしています」と、町全体の課題を指摘する。
会社概要 | 草津温泉 望雲 |
住所 | 群馬県吾妻郡草津町433 |
設立 | 1599年 |
従業員数 | 60名 |
事業内容 | 旅館業 |
URL | https://www.hotelboun.com/ |
自社サイトからの予約では事前決済も
そのほかの取り組みとして、自社サイトの外国語版ページからの予約受付において「JTB Book&Pay 」を活用した事前決済を行っている。同サービスは、予約客からの前金の管理やキャンセル料受け取りなどを代行してくれるので、大変便利だという。また事前決済の仕組みによって、予約したのに連絡なしでキャンセルする「ノーショー」の率が減った。
業務面では、予約-部屋割-顧客管理のITツールや、顧客からよくある質問に自動で回答する「チャットボット」も活用。人によるきめ細かいサービスの一方でITによる効率化を図っている。
黒岩社長は今後の展望を次のように語った。
「団塊の世代の方がリタイアするにつれ、国内需要は15%減ります。その分インバウンド率を高め、まず現状を維持すること。そしてきちんと利益を出し還元して、働く方からも選ばれる魅力ある町にしてきたい」
人口減に向かう日本において、観光地は顧客の取り合いに、そして働き手の取り合いになっていくだろう。先を見据えた対策が今、求められているのだ。