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二つの自然災害を乗り越え、「旅館の常識」に挑む

2020年秋号 2021.02.15


旅館業務をカバーするITツールで、生産性向上
  ―熊本県 温泉旅館 蘇山郷

 

町の散策が面白い─熊本県阿蘇市・内牧温泉に到着して感じたことだ。昭和をイメージした商店、個性的な飲食店、雄大な阿蘇山を望む広い視界、フレンドリーな地域バス。気ままに自由に過ごせそうだ。

この印象は、実は街が意識して取り組んできた結果だと、温泉旅館・蘇山郷で話を聞いてわかった。

 

 

 

二度の災害を乗り越え「個客」に選ばれる街へ

蘇山郷は、与謝野鉄幹・晶子宿泊の宿としても知られる、22室の旅館。まもなく創業70年を迎える。

会社概要 合資会社蘇山郷
住所 熊本県阿蘇市内牧145-1
創業 1951年
従業員数 約30人
事業内容 温泉旅館
URL http://www.sozankyo.jp

 

三代目館主の永田祐介氏は、社会人になって4年目に旅館の経営が窮地にあることを知り、事業を継ぐ決意をした。コスト削減の一方で積極的な投資も行い改革が実を結んできたさなか、九州北部豪雨、そして熊本地震と災害に見舞われる。

蘇山郷・館主 永田祐介氏

 

地震以降、地域観光業の顕著な変化は団体客の激減だった。永田氏は、個人客が長期滞在できる地域づくりへ「1泊2食という旅館の常識」からの脱却を志向した。

「長期滞在していただくには、まず泊食分離です。地域の飲食店とビジョンを共有し、街中でも自由に飲食できる『ふらっと内牧』事業を展開してきました」

その取り組みの一つである飲食店紹介の「阿蘇内牧夕食グルメガイド」は5か国語で発信。クレジットカードが利用できる店も探せる。

蘇山郷自身は、ルーフトップバーや焼酎バーなど、ナイトタイムを自由に過ごせる飲食スペースの拡充、バリアフリー対応、そして、ITツールの導入と「次への投資」を行ってきた。

 

宿泊業の業務プロセスに沿ったITツールを選択

宿泊業は、様々なルートから入る予約情報をもとに部屋割を行い、フロントで扱う個人別の情報(宿泊料金・前払い有無等)、フロアスタッフが知っておくべき情報、夕食の情報などをそれぞれに伝達する。手書きで転記していたため、時間がかかりミスも出やすかったという。

「もっと効率を上げたいとITツールを探していたところ、同業者からの紹介で当社に合うものが見つかったのです。IT導入補助金もあり、導入に踏み切りました」と永田氏は振り返る。

2019年秋に宿泊業総合管理システム「支配人くんNEXT」を導入。ネットエージェントや自社サイトなどから届いた宿泊予約情報が、部屋割、当日のフロント表、調理場への料理提供予定などに連動し、データ分析もできるツールだ。

 

転記と伝達ミスをなくしスタッフの動きを効率化

予約内容に基づきシステムが自動で部屋を割り振るので、細部を調整すれば部屋割表が完成。フロントではパソコンで来館予定顧客の情報を確認できる。調理場には大きなモニターを設置し、宿泊者別の夕食メニューと予定時間、アレルギーなど注意事項をリアルタイムで確認可能とした。

夕食の配膳では、次の料理を出すタイミングをレストラン内から調理場へボタン一つで連絡する蘇山郷独自の仕組みを作り、人の移動を削減。4人必要だった配膳を3人で回せるようになった。

 

ITの導入に際し、当初、現場からは反発もあった。館主自ら使って見せ、慣れるにつれ便利さが実感されたという。

導入から数か月で、前年同時期と比べ残業時間を13%削減でき、生産性が上がっている。

「宿泊業は人手不足。休暇を取りやすく働きやすい環境を作るには、業務の見直しによる生産性の向上が欠かせません」と永田氏は力を込める。

2020年春からのコロナ禍においては、ITによる業務の効率化で余力ができたスタッフが外注していた業務もこなし、経費削減を図れた。

厳しい環境の中ではあるが、2021年夏には新しい生活様式を意識したホテルをオープンする予定とのことだ。混乱期こそチャンスを見つけて攻める─経営者の気概が地域を牽引していく。

 

【特別インタビュー】コロナ禍の状況は?

4月の売上は前年比1割まで落ち込み、休館した期間もありましたが、6月からは7割、8割と回復し7月の連休は満室でした。密でない環境をご存知のリピーターの方もよく来てくださいます。 発熱のお客様がいらしたときの対応マニュアルをいち早く整備し、感染対策は徹底して行っています。状況は刻々と変わり今後も波がありますが、目の前のお客様に喜んでお帰りいただくことに力を注いでいきます。 (永田氏談)

 


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