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自社サイトの販売を軌道に載せたレオタードショップの歩みとは?

2015年 夏号 2015.09.03


自然豊かで住み慣れた地元でビジネスをしたい──都心にオフィスを構えずともモノを売れるインターネット通販は、新しい仕事の方法を提供し、数多くのショップを生み出した。

しかし、長い間売上を伸ばし続ける企業はそう多くはない。

リアルの店舗同様、いやそれ以上に、ネットの世界は競争が激しい。情報が簡単に広がるぶん、人気商品は模倣されたり価格競争に巻き込まれたりするからだ。また、大手ショッピングモールの台頭で、一般消費者向けのビジネスは自社サイトだけでは難しい面もある。
ネットショップの経営には、情勢を掴み変化を続ける経営力が求められるといえよう。

こうしたたゆまぬ改革を続けている企業の一つが、愛媛県新居浜市のバレエ用品ショップ・サヨリである。

ページ冒頭の写真は、代表取締役 千葉小織氏。自称、熟女社長。
先日、東京の学生から「新居浜でレオタードを作りたい」と就職希望の電話があったとのこと。これまでの歩みの成果を象徴するエピソードだ。

社名 サヨリ商店街株式会社(ネットショップ名 サヨリ)
所在地 愛媛県新居浜市下泉町1-3-39
設立 2002年
従業員数 8名
事業内容 バレエ等ダンスウェアの製造・販売
URL http://www.sayori.co.jp/

海外の子ども服から、オリジナルバレエ用品へ

バレエ用品サヨリ・千葉社長同社は、東京で海外旅行雑誌や教材編集の仕事をしていた千葉小織社長が故郷・新居浜に戻り、子ども服のネットショップとして2002年に開業した。

東京時代からネット通販を体験しており、大好きだった海外の子ども服を仕入れ、販売することに。2004年には大手ショッピングモール「楽天」に出店し、ヒット商品も出た。

「ただ、商品がヒットした後、ふと気づくと、他の店舗が同じものを売って値崩れする…。この繰り返しでした」

千葉社長は当時のことをこのように振り返る。売れ行きがにぶれば在庫を抱えるリスクもあり、利益率も高いとは言い難かった。

「生き延びる道は、自分しか売れないルートを持つか、自分の商品を持つかどちらか。私は自分が納得できる商品を作りたい」

人気商品、ノースリーブのレオタード。カタログのモデルも新居浜在住の方(同社のWebサイトより)

人気商品、ノースリーブのレオタード。カタログのモデルも新居浜在住の方(同社のWebサイトより)

千葉社長は「メーカーになる」ことを決意し、バレエの練習着であるレオタードに絞ってオリジナル商品の開発を始めた。海外製品は質が低く、国内大手メーカーは価格が高く、この分野にはビジネスチャンスがあった。サヨリでは顧客の視点で機能性を高めるなど商品を企画し、3年間保証の品質の良さと適正価格で支持を得ていった。

近所には縫製工場があり、意欲のあるスタッフも採用できた。まさに「メイド・イン・新居浜」の商品である。最近では34色のレオタードシリーズや、ディズニー映画をイメージした子供向け商品などが人気だという。

現在は、販売商品の7割が大人向けにシフト、顧客の7割は首都圏である。

ネットショップとして市場環境とともに変化するサヨリの経営判断

顧客とのリアルな繋がりも。そして、自社工場を持つ!

自社商品のファンを増やすために、サヨリでは普段から顧客の声を大切にし、感想をネットにも公開している。一方、バレエ教室への直接営業も行い、Facebookなどで教室の先生たちとの繋がりを深めているという。

さらに顧客と「互いの顔が見える場」を求め、新居浜商工会議所を通じて「小規模事業者持続化補助金」を利用し、東京で展示会を開催した。足を運んでくれたコアな顧客にアドバイザーになってもらい、その後の商品開発への貴重な意見をもらっている。

サヨリのホームページ

最近はスマートフォンからアクセスする顧客が急増している。「楽天」や「アマゾン」にも出店。相乗効果を上げるべくサイト活用の勉強に余念がない

また、大手ショッピングモールは多くの出店費用がかかるが、例えば売上上位にランキングされれば信頼の証となる。ブランディング面での価値を重視して、自社サイトと並行して運営しているという。

そしてこの夏からは、縫製まで社内で行う体制づくりに着手した。
提携している縫製工場は従業員が高齢化しており、製造技術を継承していく必要を感じていた。また、自社工場なら、生産のスピードを上げタイムリーに販売できる。

「10商品出してもヒットは1商品程度といわれます。委託工場で1カ月かかっていたサンプルが自社で1、2日でできれば、10倍の商品を市場に投入して売れる商品を見つけられる。そのスピード感がほしかったのです」と千葉社長は自社工場にかける思いを打ち明ける。

この取り組みは、ITコーディネータ藤田茂俊氏の支援を受け、「ものづくり・商業・サービス革新補助金」に採択された。

地域の支援や情報をうまく取り入れながら、変化を続けるサヨリ。
「ここ2、3年でやっと経営者になった気がします。まだひよっこですが、皆さんから情報をいただいて、事業を伸ばしていきたい」
千葉社長は魅力的な笑顔で決意を語った。

 

支援機関紹介

新居浜商工会議所 佐薙尚史氏新居浜商工会議所(愛媛県)
産業振興部 経営支援課
係長 佐薙尚史氏

新居浜商工会議所と千葉社長との縁は10年近く前にさかのぼる。地元の女性起業家として企業紹介やセミナー講師などで交流していたが、昨年の「小規模事業者持続化補助金」申請にあたり、職員の佐薙尚史氏にサポートを受けた。また、専門家派遣も利用した。

商工会議所の良さを実感した千葉社長は仲間の経営者に次々と口コミ。佐薙氏が対応しきれないほど、支援依頼がきているという。
サヨリについて、「さまざまな局面で打開策を打ち出し行動に移しているのが今につながっていると思います」と佐薙氏は分析する。アグレッシブな千葉社長はやりたいことがたくさんある。話を聞きながら「整理して優先順位をつけ、強みを活かせるよう」支援しているという。

千葉社長は、「中小企業は“番頭さん”がいません。走りながら考える私の頭を整理したり軌道修正したりしてくれるのはありがたい」と話す。
支援機関のあり方として「伴走型支援」が提唱されているが、千葉社長にとっての会議所は、ありがたい「番頭型支援」のようである。


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